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タグ: 小保方

弁護士の吉村です。

本日も労働問題について弁護士として解説を行います。

今回は,小保方さんが理化学研究所の懲戒委員会へ提出した弁明書について解説します。

 

ポイント(これだけ読めばOK)① 弁明書とは、懲戒処分を受ける労働者が、懲戒処分を回避するべく弁解を記載した書面
② 
小保方弁護団の弁明書は、理研が行った不正行為の認定に対する不服申し立て・反論と同じ内容であり、認められる可能性は低い。
③ 
不正研究をしたことを前提に、諭旨解雇又は懲戒解雇も十分ありえる。

 

弁明書とは?

懲戒解雇や諭旨解雇の懲戒処分は,労働者の規則違反行為に対する制裁として行われます。制裁という性質上,慎重に手続が行われるのが通常です。そこで,会社(又は懲戒委員会を設置する会社では懲戒委員会)が労働者に対し懲戒処分を実施しようとする場合,対象となる労働者に対し弁解の機会が与えられるのが通常です。弁解の機会を与えられた労働者が会社や懲戒委員会に対し提出する弁解の文書が弁明書です。懲戒処分を回避したい,又は出来るだけ軽い処分にしてもらいたい労働者は,適切かつ有効な弁明書を会社(懲戒委員会)に提出することが重要になります。

 

小保方弁護団の弁明書の概要

・調査委員会による認定判断は、研究不正の解釈及び事実認定を誤っており、調査及び再調査開始審査の過程にも重大な手続き違反がある。

・このような調査委員会の認定判断を前提に、懲戒委員会が「諭旨解雇」や「懲戒解雇」が相当であると判断した場合、その懲戒処分は違法となる。

・STAP論文で指摘された画像の加工などは「科学者として不適切な行為」であったことは小保方氏も深く反省しており、一定の処分がなされることはありえるが、「諭旨解雇」や「懲戒解雇」は重すぎる。

 

小保方弁護団の弁明は通用するか?

 

1 「改ざん」「捏造」の定義を狭く解釈するべきとの弁明

小保方氏の主張:「改ざん」については、研究資料に操作が加えられてデータの変更が行われたとしても、研究活動によって得られた結果が偽装されていなければ改ざんにあたらない。「捏造」についても、研究自体が架空であるような場合に限って捏造にあたる。このように狭く解釈するべきである。

 

コメント:小保方氏の主張は相変わらず、結果が正しいのだから,そのプロセスの説明部分で画像の切り貼りしたり、全く関係ない画像が貼ってあったとしても問題ないというものです。しかし,科学論文という性質上,結果はもちろん,プロセスについても正確性,真実性が非常に強く要請されます。プロセスがいい加減ならば,結果について検証の仕様がないですし、正確なプロセスの積み重ねこそが科学の根幹をなすからです。

従って、小保方氏の主張はかなり無理があり、通用しません。

 

2 「悪意」の定義を狭く解釈するべきとの弁明

小保方氏の主張:「悪意」とは、「データの誤った解釈へ誘導する危険性」の認識では足りず、「研究活動によって得られた結果等を真性でないものに加工する」認識まであって初めて悪意があったと狭く解釈するべき。

コメント:「悪意」というのは、不正研究を行ったことを認識していることを意味しますので、結局「不正研究」をどう解釈するかと関連します。先ほどのとおり、小保方氏は、「プロセス」に虚偽を加えること自体は「不正研究」ではないと考えるので、結果が間違っていない以上、悪意はないと言い張っているのです。しかし、「プロセス」の改変自体、「研究不正」にあたることは言うまでもありませんので、小保方氏の「悪意」の捉え方は採用されません。よって、小保方氏は「悪意」があったことは間違いなく認定されるでしょう。

 

なお、理研は、小保方氏の「悪意」を認定する事情として、小保方氏がSceince誌の査読者からの指摘(改ざん)を受けていたことをあげていました。これに対し、小保方氏は、Sceince誌のエディターから論文を却下し、かつ、再投稿も許可しないとの結果を伝えられたので、査読者からの指摘は一切確認しておらず、改ざんにも気がつかなかったと弁解しています。しかし、これも自分が出した論文が却下され、その理由を確認しない科学者などいるでしょうか?常識的に考えられません。当然、小保方氏のこの反論も認められないでしょう。

 

3 その他

その他、再調査をしなかったのは間違いであるとか、STAP細胞の再現性に係わる検証実験の結果を待って判断するべきであるとか、再調査委員の中にも改ざんの疑いがあったとか、細かい指摘をしていますが、いずれも小保方氏が行った不正行為との関係では本質的な反論にはなっておらず、見るべきものはありません。

 

4 結論

よって、小保方氏の弁明書の提出によっても、これまでの理研の不正研究の判定が覆る可能性は低く、「諭旨解雇」又は「懲戒解雇」などの重い処分も十分ありえるでしょう。


【関連記事】
小保方晴子さん、懲戒解雇か?
今後の小保方さんの戦い方
懲戒解雇への対応方法

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弁護士の吉村です。

本日も時事的な労働問題について弁護士として解説いたします。


小保方晴子
((c)日刊ゲンダイ)

本日は,STAP細胞の論文不正問題について,理化学研究所(理研)が小保方氏側が求めていた再調査を行わないとの結論を出したことによる,今後の紛争の行方について説明したいと思います。
 

ポイント(これだけ読めばOK)① 小保方さんの研究不正問題については,画像の修正や別の画像の貼り付けなどの不正と評価される客観的事実があり,小保方さん側でそれを覆す証拠を提出できなかったので,理研が研究不正の認定を確定させたこと自体は法的には問題はない。研究不正の認定確定それ自体については,小保方さん側は訴訟などにより争うことも出来ない。
② この問題は,今後は,理研による懲戒処分の可否・是非というステージで議論がなされる。理研としては,懲戒解雇・諭旨退職も含む厳しい処分も可能であるが,小保方さん側が訴訟等により争ってくる可能性が高い。
③ ただ,1年更新の契約社員である小保方さんは,どのみち来年の期間満了による契約終了が確実であり,懲戒解雇等を争っても来年の契約期間までの地位しか保全できないのが原則。その意味で,小保方さんが懲戒解雇を訴訟等で争うメリットは実はあまりない。
④ 退職した後であれば,懲戒処分も受けることはない。小保方さんは,懲戒処分を受ける前に,退職届を出して,処分から逃げることも戦略的にはありえる。

 

研究不正認定それ自体は訴訟で争えない

STAP細胞の論文を巡り、理研の調査委員会が改ざんとねつ造に当たる不正行為を小保方さんが行ったと認定したのに対し、小保方さんは調査のやり直しを求める不服申し立てを行い、調査委員会が再調査するかどうか審査していました。小保方さん側は各種資料を提出しましたが,理研は,5月7日,追加の資料でも不正の認定を覆す新たな証拠は示されなかったなどとして再調査の必要はないとする結論を出しました。

この結論に対しては,小保方さん側は訴訟などの対抗策をとることは出来ないでしょう。

なぜなら,理研が行ったのは,不正研究の「認定」という事実上の行為に過ぎず,「処分」という法的行為ではないため,その無効などを求めて争うことは原則的に出来ないからです。また,理研の不正研究の認定をもって,名誉毀損の不法行為であると争うことは不可能ではありませんが,客観的に画像の修正・入れ替えの事実がある以上,実際に裁判所に認容されることは非常に難しいといえ,現実的ではありません。

 

小保方さん側の代理人弁護士は,理研の結論は「到底承服できるものではない」と述べつつも,「懲戒処分が出た場合、処分の取り消しを求める裁判を起こすことも視野に対応を検討する」と述べています。このことは,懲戒「処分」が出ていない現時点では,裁判で争う余地が乏しいことを意味しています。

 

今後の主戦場は,懲戒委員会の場

 

今後の流れ

 

不正認定の確定を受け,今後,理研は,懲戒委員会を設置し,小保方さんの処分を検討することになります。

 

研究不正あり(確定)

↓ 

懲戒手続(就業規則50条~)

懲戒委員会開催(就業規則54条)

小保方氏への弁解手続

懲戒処分の決定

↓ 小保方氏が不服ある場合

再審査の請求(就業規則55条)

↓ 再審査却下

懲戒処分の確定

↓ 懲戒処分を争う場合

懲戒処分無効確認の訴訟提起

 

小保方さんの弁解

 

この懲戒委員会において,小保方さんには反論の機会が与えられるのが通常で,小保方さんは,その場で,弁解や情状酌量などを求めていくことになります。

具体的には,

研究不正にあたらないこと,仮にあたるとしても「重大」な不正ではないこと

情状酌量の余地があること

(例)

・極めて多忙ななかで差し替えを忘れたミスでありやむを得ないこと

(注:但し,4月の記者会見では,小保方さんは特に急ぎという事情はなかったと述べていましたので,信憑性はありません。)

・不正をして真実の研究成果を偽ろうとした「悪意」はないこと

(注:「悪意」とは研究不正の客観的事実及び評価を知っていたことと定義されますので,この意味での悪意は否定し難い。それ以上の「悪意」がないとしても,研究機関としての秩序を著しく乱したことは否定できない。従って,弁解としては意味がない。)

 

懲戒解雇・諭旨解雇も可能

不正研究は重く処分される

不正研究(捏造)は,実務上,懲戒解雇等の処分も例外ではなく,非常に重く処分されるのが実情です。研究機関における不正研究は,その機関への信頼を著しく損ねる行為であり,かつ,科学への冒涜でもあります。重い処分がなされるのもやむを得ないでしょう。

不正の程度によっては懲戒解雇が無効となるリスクがある


ただし,裁判例上,懲戒解雇等が有効になっているケースは,研究ノートを改竄し,再現性のない研究成果を発表した場合など,不正研究の中でも重い事案になっています。今回,理研が研究不正の認定をしたのは,研究ノートやSTAP細胞実験の再現性は対象となっていませんでした(但し,現在,理研にて調査中です。)。つまり,研究不正の中にも程度の問題があり,その中でも重い程度の不正については懲戒解雇等の重い処分が選択されていますが,そこまで重い程度に達しない場合は,懲戒解雇等の処分が「重すぎるので無効」と判断されるリスクがあるのです。

この程度が重いか否かは,不正の論文の中における位置付け,重要性,不正の程度,同種事案での理研における処分実例などを総合考慮して決められることになります。

今回の小保方さんの研究不正は,科学論文の性質を無視したものであり,許される内容ではないことは明らかです。但し,STAP細胞の再現性に直接関わる部分ではありませんでしたので,その点が裁判になって争われた場合,「そこまで重い研究不正ではなかった。ゆえに,懲戒解雇は重すぎるので無効」と判断されるリスクは残ります。

STAP細胞の再現性について不正が認められれば懲戒解雇は確実


他方で,現在も調査注のSTAP細胞の再現性の問題については,小保方さんにて非常に杜撰な研究ノートしか残していなかったことが明らかになっており,研究ノートなしで再現性のない成果を発表し不正を行ったと別途認定される可能性もあります。つまり,この調査を待って,再現性についての不正を認定すれば,ほぼ間違いなく懲戒解雇などの重い処分も有効となると思われます。

小保方さんは契約社員なので争うメリットはない!?

懲戒処分が出されるのは,おそらく6月頃と思われますが,それに対し,小保方さんは処分無効確認の訴訟を提起することが可能です。

しかし,小保方さんは,1年ごとに更新される任期付きの職員ですので,おそらく来年の任期満了時に契約期間は更新されることはないと強く予想されます。理研は,きちっと契約更新を管理している場合,来年度の更新拒否(雇い止め)は有効になる可能性が非常に高い。つまり,小保方さんはどのみち理研に勤められるのは来年の契約期間までに限られます。理研に定年まで勤められるのであれば別ですが,来年までしか勤められないのに,裁判までして,理研の処分を争うメリットが果たしてあるのか疑問があります。裁判は,早くても結論が出るまでは1年以上はかかるでしょうから,懲戒処分を争っているうちに,理研との雇用契約は終了してしまう可能性が高いのです。

それならば,他の研究機関から誘われているうちに,さっさと理研に見切りをつけて転職するということも合理的な選択肢となりえるのです。

 

退職届の“出し逃げ”も戦略の一つ

懲戒処分は,従業員との雇用契約が存在していることが前提となりますので,退職した従業員に対して懲戒処分を行うことは原則として出来ません。

懲戒処分が出される前に,他の研究機関から誘われたからといって理研にさっさと退職届を出せば,理研との雇用契約は終了し,それ以後,懲戒処分を受けることもありません。

つまり,退職届を出して,逃げることも可能なのです。

このまま理研に残ることは法的に難しいですし,不名誉な懲戒処分を受ける前に,新天地を求める,という戦略も合理的な選択肢としてあるでしょう。

 

小保方さんの代理人は5月9日、報道陣に対し「研究生活を続けるため、あらゆる可能性を探っている。理研の対応次第では、訴訟提起や、自ら理研を辞めて他の研究機関に移ることも可能性の一つ」と述べたとのことですが,その背景は上記のような事情であると推測されます。

【参考記事】
・ 懲戒解雇への対応方法
・ 退職届を出した後,懲戒解雇ができるか


【ご相談等】
・ 解雇について弁護士へのご相談
・ 会社側で労働審判について弁護士へのご相談


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こんにちは。弁護士の吉村です。

本日も労働問題に関する実務について弁護士としてコメントをさせていただきます。
※本記事更新履歴・・最終更新日 平成26年4月10日(木)
平成26年3月23日初稿 4月1日(火)一部更新
 4月10日(木)一部更新

小保方 解雇
(時事通信社) 

本日の労働問題のトピックは,小保方晴子さんは理研から懲戒解雇されるか? です。

小保方さんらが本年1月末に英科学誌ネイチャーで発表した新型の万能細胞「STAP細胞」論文。“生物学の常識を覆す内容”,“夢の若返り”等明るいニュースとして話題を呼びました。
しかし,本年2月になり,理化学研究所(以下理研)に対し,発表された論文に疑義があるとの通報がなされ,理研は,調査委員会を設置し調査を開始しました。
そして,3月14日の中間報告を経て,平成26年4月1日,理研は,5つの調査項目中,2項目について画像の改ざん及びねつ造の研究不正があったと断じ,発表しました。 

この点について,野依理研理事長は,4月1日,「科学社会の信頼性を損なう事態を引き起こした」と謝罪を行い,関係者の処分は厳正に行うことを宣言しました。また,他の理研関係者は「論文の体をなさない」「科学者の良識からすると常道を逸している」「未熟な研究者」「不正と認められた場合は厳正に処分」などとコメントをしたと報道されています。
一方で,「画像転用や論文転用なんて些細なこと。そんなことを厳密にしたら日本の若い人が論文だせなくなる」「小保方さんへの嫉妬で潰したら可哀想」などという擁護・同情論もあるようです。小保方さん本人も4月1日付で「驚きと憤りの気持ちでいっぱいです」「理化学研究所に不服申立をします。」と文書で発表し,4月9日の記者会見でも,
「事実関係をよく理解されないまま不正と判定された。弁明と説明の機会を十分に与えてもらったら、間違いの経緯を理解してもらえると思う」などと争う姿勢を発表しました

では,科学者,研究者,学者が発表する学術論文において,盗用や剽窃,捏造などの不正行為があった場合,労働法的にはどのような対応となるのでしょうか?

 

ポイント(これだけ読めばOK)① 実務では,論文の捏造はもちろん,盗用・剽窃についても,所属する研究機関の信用を損なう重大な行為として重く処分され,懲戒解雇も例外ではない。
② 小保方さんは,他の研究者の論文を引用なく用いたことについては,研究不正はないと評価された。もっとも,不注意であることは否めず,一定の懲戒処分はありえる。また,改ざん(写真の切り貼り),捏造(別の実験の画像流用)は「不正行為」に該当し,懲戒解雇の原因となる。さらに,今後の検証において研究データを捏造し再現性のない論文であることが判明した場合は懲戒解雇処分は確実。
③ 共著者も小保方さんの論文をデータの正確性などの検証しなかった点に過失があり,一定の処分は避けられない。 


1 論文の盗用・剽窃ってそんなに悪いこと?

他人が書いた論文の一部を引用表示なく自分の論文の中に入れてしまうこと,はどの程度悪いことなのでしょうか?世の中では「コピペくらい,いいんじゃない?」などという意見もあるようですが,実際はどうでしょうか?

裁判例

論文の盗用に関する判例では,「そもそも,大学等の研究機関の目的とする学術研究とは,先行業績の上に新たな知見を積み重ねることであって,そのような新たな知見を生み出すことこそが正に研究者としての業績にあたるものであるから,研究者が,論文や著書等において,他者が既に発表した見解ないし知見を,自己が生み出したものであるかのように発表することは,当該先行業績を有する当該他者の研究者としての地位を侵害するばかりか,学術研究の健全な発展を阻害し,研究者間の秩序を害することとなるため,学術研究上の不正行為として厳に許されないことが明らかである」として,盗用・剽窃それ自体,非常に悪いことだ,判断しています(岐阜地裁平成23年6月2日判決 論文に計54箇所にわたる学術研究上の不正行為による執筆箇所があった事例で,執筆した大学教授を懲戒解雇し,それが有効と判断された事例)。 

公表されている過去の処分事例

また,新聞などで公表されている大学等の研究機関における論文盗用事案における処分が以下のとおりです。※1

 

  処分   件数(総数58件)
懲戒解雇 5
諭旨解雇 4
  論文撤回のみ   9
謝罪 5
調査中 7
引責辞任 2
停職1か月 1
停職3か月 6
停職6か月 3
依願退職 1
学位取消 9
除名 1
厳重注意 2
自主退職 2
訓告 1

 

これを見ると,退職に至るケースも例外ではなく,非常に重く処分されていることが分かります。

なお,処分の量定にあたっては,論文盗用の多さ・常習性や盗用した部分の論文の中での位置づけの重要度なども考慮されるようです。

 

2 捏造(再現性なし)は重く処分されるの?

では,データをでっちあげ再現性のない論文を発表するなどの捏造はどうでしょうか?

裁判例

比較的最近の裁判例では,東大元教授の多比良和誠氏が発表した論文が「再現性、信頼性はない」として懲戒解雇された事案で,「本件各論文は、いずれも再現性がないものであり、これらは科学学術論文であるから、これらを東京大学の教授である多比良が責任著者として作成、発表 をしたことによって、東京大学の名誉や信用が著しく傷つけられたことは明らかである」として東大の懲戒解雇を有効と判断しました(東京地裁平成21年1月29日判決 第二審も結論維持 上告)。

要は,捏造なんかやったら,所属機関の信用丸潰れ,ということです。

公表されている過去の処分事例

また,新聞などで公表されている大学等の研究機関における論文捏造事案における処分が以下のとおりです。※1

処分 件数(総数33件)
懲戒解雇 13
諭旨退職  1
除名  1
立証不能,処分なし  3
自主退職  1
論文撤回のみ  4
停職  3
訓告  2
学位取消  3
調査中  1
引責辞任  1

 

これを見ると,論文の捏造は,盗用・剽窃以上に解雇・退職を含む重い処分がなされているのが分かります。

 

3 小保方さんはどうなる?

(1) 論文撤回

まず,論文において研究不正が行われたほとんどのケースで論文撤回がなされています。

また,4月1日,野依理事長は,研究不正と確認された論文一篇については取り下げの勧告を行う旨発表しています。著者の一部も同意していると報道されています。
※記者会見では,小保方さんは,理研からの論文撤回の勧告を受け,その勧告を受けたこと自体は認めたが,撤回自体については同意しておらず,かつ,今後も撤回の意思はないと発表しました。 

 

(2) 論文盗用について→不正ではないにしても一定の懲戒処分はありえる

次に,論文盗用についてですが,理研の3月31日付の報告では,他の研究者の論文をコピペしたことは認められるが,コピペした部分の論文における重要性が低く,かつ,小保方さんが悪意をもってコピペしたとは言えず,また,他の部分についてはちゃんと引用していたことから,悪意ある盗用と断ずることはできず,不正行為とは断ずることは出来ないと評価しました。もっとも,理研は実験手順を正確に記載することは科学者の当然の義務であり、論文の引用に当たっては、該当論文の内容を正確に引用することが基本である」として,かかる基本を疎かにした小保方氏の落ち度はあると認定しました。
このような小保方さんの落ち度は,たとえ不正研究に該当しないとしても,理研就業規則が定める懲戒事由(第51条(8),(9))に該当し,譴責,減給,出勤停止などの懲戒処分を下されることは十分ありえます。
従って,小保方氏は,懲戒解雇まではなされなくとも,一定の懲戒処分は避けられないのではないかと思います。

 

(3) 改ざん,捏造について → あり。懲戒解雇相当

① 改ざん(写真の切り貼り)

理研の規程※2が定める「改ざん」研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」と定義されています。
「改ざん」をもう少し分析すると,次のように要素分解されます。
Ⅰ 客観的にデータ等の意図的な修正などの状態があること
Ⅱ Ⅰが「改ざん」と評価されること
Ⅲ 主観的に,Ⅰ,Ⅱの認識があること(「悪意」)


理研は,写真の切り貼りについて,Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ全て満たすので「改ざん」の不正行為があったと認定しました。
これに対し,小保方さんは,
 客観的にデータ等の意図的な修正などの状態があること→○認める
 Ⅰが「改ざん」と評価されること→× 争う。見やすくするために操作をしたが、操作を加えたからといって結果自体は何ら影響を受けないなどとして、改ざんには当たらないと主張しています。
 主観的に,Ⅰ,Ⅱの認識があること(「悪意」)→Ⅰの認識があったことは認めるが,Ⅱの認識は争う。

つまり,Ⅰ客観的事実関係は争いようがないので,Ⅱ評価=つまり意味づけについて争っているのです。
では,どちらが正しいのでしょうか?
小保方さんの言い分は,結果が正しいのだから,そのプロセスの説明部分で画像の切り貼りしたって問題ないんじゃない?というものです。しかし,科学論文という性質上,結果はもちろん,プロセスについても正確性,真実性が非常に強く要請されます。なぜなら,プロセスがいい加減ならば,結果について検証の仕様がないからです。こんなことは素人でも分かります。従って,小保方さんの反論は科学論文の性質を無視した荒唐無稽なものと言えるでしょう。
また,小保方さん側もこの反論がかなり厳しいものであることの認識がありますので,不服申立書でも「結果的に表示方法において不適切な面があった」などと自己弁護しており非常に歯切れが悪くなっています。

以上から,写真の切り貼りについては,再調査後も「改ざん」の不正研究との結論になるでしょう。

② 捏造(別の実験の画像の流用)

理研の規程※2が定める「捏造」データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること。」と定義されています。
「捏造」をもう少し分析すると,次のように要素分解されます。
Ⅰ 客観的にデータ等が実験対象とは全く違うものが報告されていること
Ⅱ Ⅰが「捏造」と評価されること
Ⅲ 主観的に,Ⅰ,Ⅱの認識があること(「悪意」)

理研は,別の実験の画像の流用がⅠ,Ⅱ,Ⅲ全て満たすので「改ざん」の不正行為があったと認定しました。
これに対し,小保方さんは,
 客観的にデータ等が実験対象とは全く違うものが報告されていること→○認める
 Ⅰが「捏造」と評価されること→×争う誤った画像を使用したが、掲載すべき画像は、2年前の6月に撮影されており、存在しないデータや研究結果を作り上げた行為はなく、ねつ造には当たらない。
 主観的に,Ⅰ,Ⅱの認識があること(「悪意」)→争う。仮に「捏造」にあたるとしても,「単純ミス」であり,「悪意」はなかった

つまり,ここでもⅠ客観的事実関係は争いようがないので,Ⅱ評価=つまり意味づけとⅢ悪意について争っているのです。
では,どちらが正しいのでしょうか?

まず,Ⅱ「捏造」と評価できるか否かについては,さきほどの小保方さんの言い分と同じであり,
結果が正しいのだから,そのプロセスの説明部分で画像が別のものであっても問題ないんじゃない?というものです。科学論文においてこれは通用しないことは先ほど説明したとおりですので,まずⅡ「捏造」と評価されることは間違いありません。
問題はⅢ「悪意」があったか否かでしょう。
この点について小保方さんは,ラボミーティングなどでパワーポイントに貼り付けた画像を間違ってSTAP論文に付けてしまった,真正な画像はある,との反論でした。
しかし,非常に不合理な点が多く,信用できません
まず,真正な画像があるとのことですが,その真正な実験により作成された画像であることの資料(実験ノート)の存在が不明であること。真正が実験プロセスを経て作成された画像なのであれば,そのプロセスを詳細に記録した実験ノートがあってしかるべきです。しかし,存在するのか?との記者からの質問に「そのはずです・・・」などの非常に歯切れ悪い回答に終始し,かつ,あったとしても「第三者が見たときに十分な記載になっているかどうかは分からない・・・」との説明で非常に曖昧です。
また,そもそも別の実験の資料を,今回の重大な実験の資料に用いたというのも不自然極まりないと言えます。さらに,特に「急がなければならない事情はなかった」としながら,なぜSTAP論文作成の際に原データを確認しなかったのかについても明確な説明がなされていません。
以上から,「悪意」があったと認定されることは十分な理由があるといえ,再調査をするまでもなく「捏造」の研究不正もあったと結論付けることが可能でしょう。

③ 懲戒解雇か?
以上2点の研究不正をもって,懲戒解雇の合理的理由・社会的相当性という要件を備え,懲戒解雇は有効になしうると思われます。
ただ,労働裁判では労働者側優位な裁判官も多く存在しますので懲戒解雇をした場合,無効のリスクもあります。
そこで,理研としては,「STAP細胞の再現性」という最大の論点について検証を行い,この結論を待って,小保方さんを処分することになるでしょう。「STAP細胞の再現性」,この点に不正があった場合は,120%懲戒解雇は有効になるからです。
実験の再現性というSTAP細胞の存在の証明については,今回の3月31日付の理研報告書ではそもそも調査対象になっていませんでした

ただ,理研は,4月1日付けで「STAP現象の検証の実施について」との文書にて,今後1年くらいかけてSTAP細胞の再現性を検証すると公表しました。
小保方さんは4月9日の会見で「STAP細胞は存在します!」「自分で200回以上作成に成功している」と強弁していましたが,肝心の証拠については,全くといって良いほど提示されておりませんでした。実験ノートも公開しないとしています。まさに結論ありきで,科学にとって肝心のプロセス,証拠については触れられない,という一貫した態度を最後まで維持しておりました。 本当に怪しいとしか言いようがないですね・・。

(4) 共著者はどうなる?

共著者も一定の処分は免れないでしょう。
実際にも,3月31日付け報告書でも,若山さん,笹井さんらの共著者は, 「
データの正当性、正確性、管理について注意を払うことが求められていた」にもかかわらず,これを怠ったため,小保方さんの捏造を許すことになったとし,「その責任は重大」と断じています。責任著者でありかつ不正の首謀者である小保方さんほどではないにしても,他の共著者は,不注意さ(過失)について一定の処分は免れないと思われます。

(5) 小保方さんの対応(4/1時点で謝罪なし)→4/9会見では涙の謝罪

小保方さんは4月1日付けで自己のコメントを発表しました。
理研の調査結果には,「
驚きと憤りの気持ちでいっぱいです」と非難をし,また,「研究不正と認定された2点については,理化学研究所の規程で「研究不正」の対象外となる「悪意のない間違い」であるにもかかわらず,改ざん,ねつ造と決めつけられたことは,とても承服でき」ないとして,近日中に,理化学研究所に不服申立をすると宣言しました。ただ,小保方さんの反論は,要するに「悪気はなかった」「単純ミスでしょ」と言い訳するものに過ぎません。また,最も驚くべきことは,発表したコメントにおいて,一切謝罪の言葉が述べられていないことです。研究不正と評価されるか否か,悪気があったのか否かといったことは置いておくとしても,客観的事実として,修正した画像の論文への添付や全く違う実験条件の画像の取り違えがあり,これにより理化学研究所の信頼・社会的評価を低下させたことは間違いないでしょう。にもかかわらず,「私の不注意でご迷惑をおかけし誠に申し訳ありませんでした。」程度の謝罪の言葉の一つもないのは,ある意味凄いですね。反省の姿勢が全く示されていないからです。後々裁判となった際に,裁判官の心証が悪くなります。
と指摘していたら,4/9の記者会見に際しては,一転,涙ながらに謝罪をしていました。この点は,戦略的なものであることは,小保方晴子さん 謝罪「理研で研究続けたい」その真意は?をご参照ください。

 

※1 参照論文 菊池重秋「我が国における重大な研究不正の傾向・特徴を探る」別表
※2 
科学研究上の不正行為の防止等に関する規程

【参考サイト】
・ 懲戒解雇とは?
・ 職場外の非違行為で懲戒解雇できる?
 ・   解雇で弁護士に相談したい場合なら





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