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カテゴリ : 労働時間

【労働問題の実務-弁護士の解説】(メモはタイムカードの代わりになるか?)

 

こんにちは。弁護士の吉村です。

本日も労働問題に関する実務について弁護士としてコメントをさせていただきます。

本日の労働問題の実務トピックは,労働者がつけていた出退勤のメモはタイムカードの代わりになるか?です。

労働者が残業代請求を行う場合,残業をした事実については労働者に立証責任があります。会社でタイムカードによる労働時間管理を行っていた場合は,タイムカードが残業時間の有力な証拠となります。しかし,タイムカードで管理をしていない会社の場合,労働時間を証明する客観的証拠がないこともよくあります。

 

写真

そこで,残業代を請求したい労働者は上記のような労働時間のメモしたものを証拠として残業時間を証明しようとするケースがよくあります。このような証拠が出された場合,会社は残業代を支払わなければならないのでしょうか?

 

ポイント

●時間外労働をしたことの客観的立証責任は,労働者の側にある

●タイムカードなどの客観的証拠がない場合は,労働者側が,業務日誌や業務週報の写しや,個人的な日記のような資料によって証明することがある。

●但し,単に時刻を記録したメモなどは証拠とはならないことが多い

 

 解   説 

労働基準法は,賃金全額払の原則(労基241項)を定め,しかも時間外労働や休日労働について厳格な規制を行っていることからすれば,使用者に,労働者の労働時間を適正に把握する義務を課していると解釈されています(但し,条文上明確にはされていません。)。厚生労働省も,「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関する基準」(平成1346日基発339号)を定め,使用者が労働時間の適正な把握と適切な労働時間管理を行うべきことを確認しています。
 

もっとも,時間外労働をしたことの客観的立証責任は,労働者の側にあります(労働時間の適正把握義務と労働時間の立証責任のギャップが紛争を生んでいます。)。

タイムカードなどの客観的な記録があれば,職場にいた時間=労働時間との経験則に基づいて,残業時間の立証は割と容易になされます。
 

しかし,タイムカードなどの客観的証拠がない場合,労働者が業務日誌や業務週報の写しや,個人的な日記のような資料によって,職場にいた時刻を一応立証し,使用者側がそれに対して有効適切な反証ができない場合には,その資料によって職場にいた時刻の事実を認定することもありえます。
 

ただし,労働者の上記証明は,あくまでも「証明」つまり裁判官に確証を得させる必要がありますので,そう簡単ではありません。

先ほどの画像にあるような時間メモだけでは証明は困難と言わざるを得ないでしょう。

会社側としては,労働者が適当に持ってきたメモに対し,正々堂々と否定した場合,労働者が証明できない結果となり,残業代請求が認められないことも実務的には多くあります。

私の経験でも,会社側について残業代請求事件を戦ったケースで,労働者が手帳に労働時間を記載したものを残業時間の証拠として提出してきたことがありました。

会社側としては,ありえない残業時間でしたので,労働者が裁判で残業代をせしめんとして適当に書いて出したものであることは明白でした。そこで,労働者の主張及びその手帳の信用性を徹底的に争うとともに,労働者の手帳の記載を潰す証拠も探しました。すると,会社ではセコムのセキュリティーを採用しており,セキュリティー機器の解除・セット時刻が記録されていることが判明しました。つまり,セキュリティーの解除時刻前及びセット時刻以後に従業員が会社内に立ち入ることはありえないという証拠となったのです。それを一覧表にして労働者の手帳の労働時間の記載と照合すると,セキュリティーをセットした時刻以後であるにもかかわらず,労働者の手帳には会社内で働いていたとする時刻が記載されている部分が多数判明しました。つまり,労働者の手帳は,セキュリティーのセット時刻という客観的証拠と矛盾し,その信用性は崩壊し,証拠としての価値は0になったのです。

結果,会社側完全勝訴。労働者側の請求を棄却させました。
 

このように,労働者側が出してきた適当な証拠に惑わされずに,最後まで諦めずに客観的証拠の破片を探し抜くということが非常に重要ですね。

 

なお,詳細な解説は公式サイト「労働時間についての裁判所の認定」 もご参照ください。また,「残業代の計算方法」も併せてご参照ください。

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弁護士の吉村です。
 

最近は快調なペースでブログの更新をしております。

さて,今回も労働問題に関する判例について弁護士として解説させて頂きます。

今回は労働時間に関する最新の最高裁判例について。

またもや最近の労働審判で頻出の残業代請求事件についてです。労働審判に代理人弁護士として関与する場合,最近極めて多い事件類型です。

 

  ポイント(これだけ読めば十分!)  
① 会社側(使用者側)にて労働者の労働時間の把握し,残業がある場合は残業代を払わなければならないのが原則。

② 例外的に,例えば外回りの営業社員のように,労働者が何時まで働いたのかを会社で把握できない場合,一定時間働いたことと「みなす」制度が事業場外労働みなし制。

③ ただ,あくまでも例外的な制度なので,その適用要件は厳格に解釈される。要件の1つである「労働時間を算定し難い」という要件は,例えば外回りの営業社員であっても,携帯電話等によって随時指示を受けながら仕事をしているような場合,否定される。

④ 今回の最高裁の事案も,国内旅行の派遣添乗員のケースだが,詳細な旅行日程が組まれていて基本的には変更できないこと,日報,携帯電話の貸与などの事情からすると,「労働時間を算定し難い」とは言えないと判定された


 判 旨 

「本件添乗業務は,ツアーの旅行日程に従い,ツアー参加者に対する案内や必要な手続の代行などといったサービスを提供するものであるところ,ツアーの旅行日程は,本件会社とツアー参加者との間の契約内容としてその日時や目的地等を明らかにして定められており,その旅行日程につき,添乗員は,変更補償金の支払など契約上の問題が生じ得る変更が起こらないように,また,それには至らない場合でも変更が必要最小限のものとなるように旅程の管理等を行うことが求められている。そうすると,本件添乗業務は,旅行日程が上記のとおりその日時や目的地等を明らかにして定められることによって,業務の内容があらかじめ具体的に確定されており,添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られているものということができる。
 また,ツアーの開始前には,本件会社は,添乗員に対し,本件会社とツアー参加者との間の契約内容等を記載したパンフレットや最終日程表及びこれに沿った手配状況を示したアイテナリーにより具体的な目的地及びその場所において行うべき観光等の内容や手順等を示すとともに,添乗員用のマニュアルにより具体的な業務の内容を示し,これらに従った業務を行うことを命じている。
 そして,ツアーの実施中においても,本件会社は,添乗員に対し,携帯電話を所持して常時電源を入れておき,ツアー参加者との間で契約上の問題やクレームが生じ得る旅行日程の変更が必要となる場合には,本件会社に報告して指示を受けることを求めている。
 さらに,ツアーの終了後においては,本件会社は,添乗員に対し,前記のとおり旅程の管理等の状況を具体的に把握することができる添乗日報によって,業務の遂行の状況等の詳細かつ正確な報告を求めているところ,その報告の内容については,ツアー参加者のアンケートを参照することや関係者に問合せをすることによってその正確性を確認することができるものになっている。
 これらによれば,本件添乗業務について,本件会社は,添乗員との間で,あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で,予定された旅行日程に
途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ,旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされているということができる。
 以上のような業務の性質,内容やその遂行の態様,状況等,本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法,内容やその実施の態様,状況等に鑑みると,本件添乗業務については,これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと解するのが相当である。」 


事業場外みなし制についての詳細な解説は当事務所公式HPをご参照ください。

・ 事業場外みなし労働時間制とは?(外部リンク)
・ 事業場外みなし制のチェックポイント(外部リンク)

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本日も残業代の問題について。

とにかく最近多い類型のトラブルだからです。

では,残業代の問題は,突き詰めれば人事のストラクチャーの問題で,多額の残業代を請求されてしまうのは,労働時間・賃金の制度設計ミスです。

つまり,制度をしっかり構築していれば多額の残業代を請求されることは未然に予防できる事項であるし,経営者としてはそのような対策をぬかりなくしておかなければならないのです。

労働者から突然多額の残業代を請求されると,「ハイエナのような奴だっ!」「非常識だっ!」とおっしゃる社長が多いです。

しかし,動物のハイエナもそこにエサがあるから食いつくのであり,非常識でも何でもありません。労働者も労基法に基づいて請求をしていますので,非常識でもなんでもないのです(経営者からすると感情的には受け入れがたいかもしれないですが・・・)。

それを非難することは,法律を非難するに等しく,であれば,労働者をハイエナ呼ばわりするのではなく,国会議員を通じて法律を改正させるのが筋です。

ま,そんなことは簡単にできるわけないですが。

要は,残業代を請求してきた労働者に怒りを覚えるのは仕方ないとしても,そんなことよりも,会社のストラクチャーを見直すことが急務だということです。

それさえしっかりしていれば多額の残業代なんて発生しなかったのですから。

では,多額の残業代を予防するストラクチャーとな何か?
 
残業代の発生予防策
①残業を事前許可制とする。
②労働時間を適正に把握する。
③残業禁止命令を発する。
④残業をしない職場環境の構築
⑤事業場外のみなし労働時間制の適用
⑥裁量労働時間制の導入
⑦振替休日の利用
⑧変形労働時間制の導入
⑨残業代の固定払い

といった方策があります。

これらの詳細については,また改めてご説明したいと思います。

~おわり~

弁護士の吉村です。

久々の更新となりすいません。

本日は,残業代請求対応に関連してお話したいと思います。

会社は残業代請求に際して,タイムカードを隠せるか?です。

会社によっては業務の内容や性質から,従業員に対して,毎日ある程度は残業をしてもらわざるを得ないことがあります。

すると,原則として 残業代を支払わねばなりません。毎日数時間ずつであっても,これが積み重なるとトンデモない金額になることがよくあります。数百万の残業代を従業員から請求される,なんてことはざらにあるのです。

よくあるのが,退職と同時に行われる従業員からの残業代請求です。
退職により会社との雇用関係がなくなるので,気兼ねなしに請求をすることが出来るのでしょう。

ただ,残業を請求する場合,法律的には,残業の事実は労働者に立証責任があります

つまり,労働者が,タイムカード等によって証明を出来なければ,裁判所は原則として残業を認めないのです。

そこで,抜け目のない労働者は,退職する前にタイムカードをコピー(写メールなどの場合もある。これも証拠になる。)するなどして証拠をきちっと確保しています。

これに対して,タイムカードなどの資料を持たずに残業代を請求したい労働者は,会社にタイムカード等の資料の開示を求めてくることがあります

ただ,会社としては,証拠となるタイムカードなんか出したくない,というのが本音でしょう。出してしまえば,残業がある場合は,確実な証拠になってしまいます。これに対する有効な反論(管理監督者,固定みなし残業代の支給等)が無いような場合はなおさらそうでしょう。

その場合,会社はタイムカードを隠してしまうことは出来るのでしょうか?

結論
・労働者は証拠保全手続,文書提出命令等の手段があり,結局出さなければならない羽目に。
・さっさと出して減額した金額での和解をすることが合理的な解決につながることも多い。 


会社がタイムカードを提出しない場合,労働者は何をしてくるか?

① 労働基準監督署への通告
これは労働者からしますと,お金もかからずに出来る手段ですので,実務では割を利用されることが多いと言えます。通告がなされると,労基署より会社へ確認の電話などがかかってきますし,呼出を受けて事情聴取を受けることもあります。場合によっては,労基署が会社に乗り込んで調査をすることや,是正勧告を行うこともあります。
労働基準監督官が会社に来るのは,他の従業員への影響などを考えると,好ましいことではないですし,役人にずかずかと会社に立ち入られることを嫌がる経営者も多いです。

② 証拠保全手続(民訴法234条)
証拠保全は,訴え提起前に行なうことも可能な裁判所が行う証拠調べです。
ある日,突然,執行官が,証拠保全の決定書を持って会社に来ます。そして,その1時間後くらいに,裁判官と裁判所書記官,カメラマンが会社に来ます。そして,タイムカードを出すように命じられます。そして,タイムカードをコピーするか,またはカメラマンがパシャパシャと撮影して帰ります。これにより労働者はタイムカードを入手することができます。
これは,会社にとってかなりインパクトがありますね。 いきなり執行官から決定書を渡され,その直後に裁判官が会社に訪れますと,会社内はかなりざわつきます。経営者ははっきり言ってビビリますよ。
この手続は社労士も知らない人が多く,それが故に,気安く「社長,タイムカードなんて出す必要ないですよ!」とアドバイスする人がいますが,証拠保全手続でかちこまれるリスクは事前に説明しなければ,社長に怒られますよ。

③ 文書提出命令(民訴法219~)
訴訟になり労働者が文書提出命令申立を行い,タイムカードの提出を求めることができます。
その前に,裁判所は会社側にタイムカードを証拠として任意に提出するように再三求めてきます。これに従わない場合は,文書提出命令が出されます。
会社がこれにも従わないとどうなるか?
・ まず,労働者の言い分通りに労働時間が認定されてしまいます。労働者はタイムカードがなくとも,記憶などにもとづいて推定した労働時間を主張・立証してきますが,これが認められてしまうのです(民訴法224条1項)
・ また,20万円以下の科料の制裁を受けることもあります。
ですので,会社としては結局は出さざるを得なくなります。

和解の金額

そして,会社がタイムカードを提出を拒み,訴訟が長引けば長引くほど,労働者が感情的になり,最終的な和解金が高額になる傾向があります。つまり,感情的になり,値引きしてくれなくなるのです。
これに対し,訴訟前に,さっさとタイムカードを出して,ざくっと値引いた金額を提案すると,意外とと受け入れられたりします。
また,タイムカードの提出を拒んで訴訟に発展した場合,裁判対応の為にかかる人事部,経営者,従業員の人的負担はもちろん,弁護士費用の負担も馬鹿になりません。
そうだとすると,訴訟前に,さっさとある程度の金額を払ってしまった方が,会社にとってコストの点でよいことが多いのです
 
もちろん,会社側にて有効な反論がある場合は徹底的に行うべきです。ただし,それとタイムカードなどと開示するか否かは別次元の問題と考えた方がよいでしょう。

なお,東京地裁労働部の裁判官も同様の意見を述べていました。

元東京地裁36部 藤井聖悟 裁判官
使用者は、労働者が主張立証責任を負っているからといって、非協力を決め込む訳にはいかず、労働者の労働時間を適正に把握する義務を負っていることを踏まえて、労働者からの証拠の事前開示の申出に対して、誠実に対処する必要があるように思います。こうした事前申入れの拒否は、問題の先送りに過ぎませんし、多寡はともかく、支払うべき残業代がある場合には、将来的に、遅延損害金や付加金の負担や労働者側の譲歩を引き出しにくくなるなどのリスクが発生することとなりますので、自分の首を絞めることにもなりかねません。ですから、労使とも、訴訟前の段階でこうした相談があった場合には、証拠の事前開示を求めた上で、未払残業代の有無及び額についで、踏み込んで検討し、任意の残業代支払の可否及び条件等について事前交渉を行うことを励行していただきたいと思います(割増賃金請求訴訟の知識と実務 (弁護士研修集中講座)P186)。


~おわり~

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