労働問題.COM|弁護士による労働問題(労働審判,労働組合)の解説 

解雇,残業代,派遣,非正規社員,労働審判,労働組合,訴訟,仮処分などの労働問題について経験豊富な弁護士が分かりやすい解説をしています。

カテゴリ : 裁判実務

 

弁護士の吉村です。

さて,本日は,「言葉によるセクハラ」に関し,最高裁判決が出されましたので,その解説です。

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事案はこんな感じです。セクハラ親父が,若い女性社員に対して,他に誰もいない状況で,「俺のん,でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はその方がいいんかなあ。」「この前,カー何々(セックス)してん。」「結婚せんでこんな所で何してんの。親泣くで」「30歳は・・おばさんやで。」「もうお局さんやで」「お給料全部使うやろ。足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。」などとセクハラ発言を1年以上にわたって行った事案です。


被害女性は嫌気がさして退職してしまいました(なお,この件で,被害女性がセクハラ親父を訴えたら,慰謝料が認容されてもおかしくない事案といえるでしょう。)

会社の従業員中,過半数が女性社員で,顧客も約6割が女性という,女性が多い職場です。女性従業員を大事にしなければ成り立たない職場ということが出来ます。

会社は,セクハラ親父に対して,出勤停止及び降格の懲戒処分を行いました(これは,解雇に次ぐ重さの処分です。)。これに対し,セクハラ親父達は,「注意とかならまだしも,出勤停止や降格は重すぎるやん!」と懲戒処分の無効を求めて提訴しました。

第1審は会社勝訴,第2審はセクハラ親父勝訴,そこで,今回の最高裁が,セクハラ親父への懲戒処分は相当であるとして,会社勝訴を言い渡しました。

 

セクハラで懲戒処分というと,ホテルに連れ込んだとか,お尻をさわった,などという身体への接触があるケースが多く,言葉のセクハラは,せいぜい注意や始末書程度で済まされていたのがこれまでの現状だったと思います。言葉のセクハラで,解雇に次ぐ重さである出勤停止や降格まで行うという企業はそれほど多くなかったと思います。しかし,今回問題となった会社では,セクハラ親父に対して出勤停止及び降格という重い処分で毅然とした態度を示し,それが最高裁でも認められました。つまり,企業は,言葉のセクハラに対しても,重い処分をもって毅然とした態度を取ることができる,ということのお墨付きが与えられたのです。

 

また,今回の事案では,「女性が嫌がっているとは思わへんかったわ~。むしろ笑って聞いていたで~」というセクハラ親父の典型的な弁解についても,最高裁は,「セクハラ親父とことを構えたくない女性が我慢してるだけじゃ,ボケ!勘違いすな!」と切って捨てました。その意味も大きいでしょう。

 

戦後,我が国では,女性の社会進出が推奨され,男女雇用機会均等法等の法の整備も一応はなされておりますが,まだまだ女性にとっては働きにくい社会であることには間違いないでしょう。職場のセクハラは,女性の就業環境に影響を与え,就労意欲やモチベーションを低下させる大きな要因の一つとなります。セクハラにより優秀な女性社員の離職や成果減退に繋がることからすると,企業秩序のみならず,企業利益をも損なうと言うことができます。セクハラに対する対策後進国である我が国は,漫然とセクハラを見逃してきた気風があり,企業もさほど厳しい対応はとってこなかったのですが,今回の最高裁判例により企業が毅然とした態度でセクハラ労働者に対して臨むことができることを明らかにした意義は大きいでしょう。

また,女性労働者は,言葉のセクハラ被害にあった場合,慰謝料請求などは法的に認められないとしても,会社へセクハラ被害を申告し,再発防止を求めると共に,会社にセクハラ親父への懲戒処分をするよう求めることは可能です。今回の最高裁判例により,より重めの懲戒処分を求めることで,セクハラ親父対策をとることができることを意味します。

 

セクハラ親父は,「セクハラ,セクハラって,そんなに堅いことばかり言わんと~。女の子としゃべられへんわ~」などという意識では,足下をすくわれる,そんなことを示唆する判例と言えますね。

なお,全体的にエセ関西弁口調で失礼しました・・・ 今回の最高裁判例の中にも関西弁でのセクハラ発言が引用されており,セクハラ発言の下衆さかげんを倍増させていたので,ついつい言ってみたくなりました。

それでは,また。 

弁護士の吉村です。

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本日も労働問題に関し弁護士として解説させていただきます。

前回に引き続き,巷で話題の小保方さんの改ざん・捏造問題についてです。

「STAP細胞」論文について,本年4月1日,理研より改ざん及び捏造の研究不正の単独犯として断罪された小保方さん。謝罪は一切せずに,直ちに弁護士を雇い,「驚きと憤りの気持ちでいっぱいです」と怒りをあらわにし,研究不正判定については,不服申立をすると宣言しました。

しかし,ここにきて一転,小保方さんは代理人を通じて「世間をお騒がせし、共同著者に迷惑をかけ、若い研究者として至らなかった点はおわびしたい」と話し「今後も理化学研究所で研究を続けたい」という意向を示していると報道されました。

一切謝罪をせず怒りを爆発させていた小保方さん。理研に戻っても誰も援助者はおらず四面楚歌は目に見えています。本気なのでしょうか?その背後にある戦略とは?

 

ポイント(これだけ読めばOK)① 小保方さんの謝罪,職務継続の表明は,今後の法廷闘争を有利に進める為の戦略にすぎない。
② 本当の
狙いは,懲戒解雇処分を回避し,研究者としての立場を維持しながら,最終的には他への転職にある。
③ 本当に重要な争点はSTAP細胞の再現性。理研と小保方さんお本当の闘いはこれから。 

 

懲戒解雇を回避する弁護戦略は?

まず,一般に懲戒解雇されそうな労働者がとる戦略は,

①懲戒解雇の原因がないことを主張する

②反省の謝罪の意思を示し情状酌量を得る

③職務継続の意思を示す

ことが基本となります。これについて以下説明します。 

①懲戒解雇原因について

懲戒解雇は,そもそも原因がなければされることはありません。いわば刑法で禁止されている行為をした事実がなければ無罪となるのと同じです。

理研が定める懲戒解雇原因は次のとおりです。

就業規則第52条(諭旨退職及び懲戒解雇)

研究の提案、実行、見直し及び研究結果を報告する場合における不正行為(捏造、改ざん及び盗用)が認定されたとき。

 

科学研究上の不正行為の防止等に関する規程

第2条 この規程において「研究者等」とは、研究所の研究活動に従事する者をいう。

2 この規程において「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。

(1)捏造 データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること。

(2)改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。

(3)盗用 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること。

 

このように,小保方さんの場合,「研究不正」があることが懲戒解雇の原因となりますので,これを「研究不正」に該当しないと争うことが戦略の第一歩です。

実際にも小保方さんは4月8日に不服申立を行ったと報道されています。  

②情状酌量について

また,懲戒解雇の原因があっても,情状酌量の余地がある場合は,懲戒解雇はされません。殺人犯であっても情状酌量の余地がある場合には死刑を免れるのと同じで,懲戒解雇という極刑も情状酌量の余地がある場合は回避されます。

小保方さんは,4月1日の時点では,一切謝罪もせずに憤慨していました。この点について,私はブログで「裁判官の心証を害する態度だ。」と指摘していましたところです。すると,小保方さんもまずいことに気付いたのか,一転,「世間をお騒がせし、共同著者に迷惑をかけ、若い研究者として至らなかった点はおわびしたい」などと謝罪の意向を発表するようになりました。労働問題に詳しい弁護士に助言を受けることができたのか,又は,小保方さん自身が懲戒解雇の危機にある自覚が遅ればせながらでたのでしょう。普通の人ならば悪いことをしてしまったという意識があるのであれば,最初から謝罪の意思を示しますが,小保方さんのような後出しの謝罪はまず戦略的なものと考えてよいのではないでしょうか。 

③職務継続の意思を示す

小保方さんは,今回の捏造騒動の間,体調不良を理由に,理化学研究所へ出勤しておらず,いわば雲隠れしていると報道されています。
今までちやほやしてくれていた理研からは単独犯と断罪され,共同著者もさっさと謝罪及び論文撤回の意思が表明されており,小保方さんは,人間不信に陥っているのかもしれません(まあ,それだけの過ちがあったのですが・・)。コピペや捏造,改ざんの論文を書く研究者として烙印を押されていますので,同僚の研究者も誰も小保方さんに近づかないでしょう。このまま理研にいても孤立し,まともな研究生活は送れないことは目に見えています。にもかかわらず,小保方さんは「理研で研究を続けたい」などと発表しています。一体何を考えているんだ,と思う人がいてもおかしくありません。

私の見解では,これも小保方さん側の戦略でしょう。

小保方さんの雲隠れ状態は,有給休暇を消化して行われていると推測されますが,有給がなくなると,理研へ出勤しないことは単なる欠勤の継続ないし仕事をする意思が喪失していると後々裁判で認定されかねません。そこで,こういう場合は,「職務継続の意思」を表明するのがセオリーとなっており,これを行うことで意味も無く欠勤を継続している,働く気がない,などという使用者側の批判を回避することができます。

今回の小保方さんの「理研で続けたい」宣言もこの趣旨であると考えて間違いないでしょう。普通の神経の持ち主ならば,理研で研究は続けることは難しいのではないでしょうか。

 

おわりに

研究不正の判断や懲戒解雇処分が確定すれば,小保方さんの研究者としての人生は終わるといっても過言ではないでしょう。研究者としての生死をかけた闘いに,弁護士を4人も雇ったというのもあながち大袈裟ではないでしょう。

捏造や改ざんが表に出ていますが,最大の争点は,「STAP細胞」論文の再現性でしょう。理研は,今後1年をかけて研究チームに検証をさせると発表しています。STAP細胞の存在にかかわるデータに捏造があり,再現性がないことが明らかになった場合は確実に懲戒解雇は確定するでしょう。小保方さんの本当の闘いは,4月1日の理研報告の先にあるのです。

 

【関連リンク】
・ 懲戒解雇とは
・ 懲戒解雇への対応方法
・ 解雇で弁護士に相談したい場合なら


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【労働問題の実務-弁護士の解説】(メモはタイムカードの代わりになるか?)

 

こんにちは。弁護士の吉村です。

本日も労働問題に関する実務について弁護士としてコメントをさせていただきます。

本日の労働問題の実務トピックは,労働者がつけていた出退勤のメモはタイムカードの代わりになるか?です。

労働者が残業代請求を行う場合,残業をした事実については労働者に立証責任があります。会社でタイムカードによる労働時間管理を行っていた場合は,タイムカードが残業時間の有力な証拠となります。しかし,タイムカードで管理をしていない会社の場合,労働時間を証明する客観的証拠がないこともよくあります。

 

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そこで,残業代を請求したい労働者は上記のような労働時間のメモしたものを証拠として残業時間を証明しようとするケースがよくあります。このような証拠が出された場合,会社は残業代を支払わなければならないのでしょうか?

 

ポイント

●時間外労働をしたことの客観的立証責任は,労働者の側にある

●タイムカードなどの客観的証拠がない場合は,労働者側が,業務日誌や業務週報の写しや,個人的な日記のような資料によって証明することがある。

●但し,単に時刻を記録したメモなどは証拠とはならないことが多い

 

 解   説 

労働基準法は,賃金全額払の原則(労基241項)を定め,しかも時間外労働や休日労働について厳格な規制を行っていることからすれば,使用者に,労働者の労働時間を適正に把握する義務を課していると解釈されています(但し,条文上明確にはされていません。)。厚生労働省も,「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関する基準」(平成1346日基発339号)を定め,使用者が労働時間の適正な把握と適切な労働時間管理を行うべきことを確認しています。
 

もっとも,時間外労働をしたことの客観的立証責任は,労働者の側にあります(労働時間の適正把握義務と労働時間の立証責任のギャップが紛争を生んでいます。)。

タイムカードなどの客観的な記録があれば,職場にいた時間=労働時間との経験則に基づいて,残業時間の立証は割と容易になされます。
 

しかし,タイムカードなどの客観的証拠がない場合,労働者が業務日誌や業務週報の写しや,個人的な日記のような資料によって,職場にいた時刻を一応立証し,使用者側がそれに対して有効適切な反証ができない場合には,その資料によって職場にいた時刻の事実を認定することもありえます。
 

ただし,労働者の上記証明は,あくまでも「証明」つまり裁判官に確証を得させる必要がありますので,そう簡単ではありません。

先ほどの画像にあるような時間メモだけでは証明は困難と言わざるを得ないでしょう。

会社側としては,労働者が適当に持ってきたメモに対し,正々堂々と否定した場合,労働者が証明できない結果となり,残業代請求が認められないことも実務的には多くあります。

私の経験でも,会社側について残業代請求事件を戦ったケースで,労働者が手帳に労働時間を記載したものを残業時間の証拠として提出してきたことがありました。

会社側としては,ありえない残業時間でしたので,労働者が裁判で残業代をせしめんとして適当に書いて出したものであることは明白でした。そこで,労働者の主張及びその手帳の信用性を徹底的に争うとともに,労働者の手帳の記載を潰す証拠も探しました。すると,会社ではセコムのセキュリティーを採用しており,セキュリティー機器の解除・セット時刻が記録されていることが判明しました。つまり,セキュリティーの解除時刻前及びセット時刻以後に従業員が会社内に立ち入ることはありえないという証拠となったのです。それを一覧表にして労働者の手帳の労働時間の記載と照合すると,セキュリティーをセットした時刻以後であるにもかかわらず,労働者の手帳には会社内で働いていたとする時刻が記載されている部分が多数判明しました。つまり,労働者の手帳は,セキュリティーのセット時刻という客観的証拠と矛盾し,その信用性は崩壊し,証拠としての価値は0になったのです。

結果,会社側完全勝訴。労働者側の請求を棄却させました。
 

このように,労働者側が出してきた適当な証拠に惑わされずに,最後まで諦めずに客観的証拠の破片を探し抜くということが非常に重要ですね。

 

なお,詳細な解説は公式サイト「労働時間についての裁判所の認定」 もご参照ください。また,「残業代の計算方法」も併せてご参照ください。

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