労働問題.COM|弁護士による労働問題(労働審判,労働組合)の解説 

解雇,残業代,派遣,非正規社員,労働審判,労働組合,訴訟,仮処分などの労働問題について経験豊富な弁護士が分かりやすい解説をしています。

カテゴリ : 裁判例の解説

こんにちは。弁護士の吉村です。

本日も労働問題に関するホットな最新判例について弁護士としてコメントをさせていただきます。

本日の労働問題の判例は,社員が会社の営業機密が保存され業務上使用されていたハードディスクを無断で持ち帰ったことを理由とする解雇が無効となった事案です。
情報漏洩 懲戒解雇

石油等を販売する株式会社に勤めていた社員が,会社の営業機密が満載のハードディスクを上司に無断で持って帰りました。
このハードディスクには,会社の取引に関する営業機密(取引先,受注数量,単価など)のデータが過去数年分保存されていたのです。
もしこのようなデータが競業他社などに漏れたら,会社が営業的な大打撃を受ける可能性は非常に大きい状況でした。

そこで,会社は,「会社の業務上の機密及び会社の不利益となる事項を外に漏らさないこと」という就業規則の規定に違反するとして懲戒解雇(及び予備的普通解雇)をしました。

しかし,裁判では無効と判定され労働者が勝訴しました。その理由は? 

 

ポイント(これだけ読めば十分!)
① ハードディスクを持ち帰ったとしても,その中の営業機密情報を「漏らした」ことを会社が証明できない以上,規定違反にはならない。
② 
また,情報漏洩していない以上,重大な規律違反とは言えず,もともと解雇は出来ない。
③ 
懲戒解雇としてはもちろん,普通解雇だとしても無効。


 判 例 情 報 

乙山商会事件

東京地裁(平成25年6月21日)判決

労働判例 1081-19

 

 事 案 の 概 要 

【当事者】

X(原告):男性従業員。H17 正社員採用

Y(被告):石油製品その他燃料の販売等を業務とする株式会社。

【事案の概要】

H17.春 Xは、採用された。その後,自費でハードディスクを購入し,業務用データのバックアップ用に使用していた。
H24.1.10 Xは,ハードディスクを上司の許可無く持ち帰った
  1.13 YはXに事情聴取
  1.18 YはXを懲戒解雇処分
 

 結   論 

請求認容(慰謝料請求は棄却)(労働者勝訴)

 

 解 説 

1 労働者は秘密保持義務を負っている


まず,労働者は,会社との雇用契約に基づいて,会社の秘密を保持する義務があります。そして,多くの会社の就業規則において,労働者に対し秘密保持義務が課され,あるいは名誉・信用の失墜行為が禁止されており,これらの違反は懲戒処分や解雇の理由となり得ます。

 

2 でも,情報を持ち出されただけでは解雇することは難しい


労働者が会社の機密情報を持ち出した場合,会社は,就業規則に基づいて一定の処分を行うことは出来ますが,持ち出しだけでは解雇をすることは難しいのが現状です。

 

一般的には,解雇が出来るのは,

①労働者が機密情報を

②第三者に開示する意思で

③第三者へ開示した,又は,それと同等の危険にさらした,ないしさらそうとした

という要件を満たす必要があり,かつ,この点を会社が証明できなければなりません。

 

この証明は,会社としてはかなり難しく,解雇処分の前において慎重な確認作業が必要となります。 

3 会社の情報管理が重要!

 

会社としては,何よりも事前の情報管理体制の構築が大切です。

 

今回ご紹介した事案では,従業員が持ち帰ったハードディスクはそもそもその従業員の私物であり,かつ,会社もそのことを把握していませんでした。これだけでも会社の情報管理体制がなっていないことが分かりますね。

 

(1) 情報管理体制

 

まず,そもそも業務用のデータは会社が提供するハードディスクやパソコンにて管理するべきであり,従業員個人のパソコンやハードディスクは持ち込み自体禁止するべきでしょう。

 

会社の情報を,従業員個人のPCなどに保存させていては,会社にて情報の管理が徹底できません。特に,従業員が退職した後に,情報の行方が分からなくなってしまいます。

 

(2) 情報管理のルール

また,就業規則などにおいて,情報管理のルールをしっかり明記し,労働者に周知徹底することも大切です。

4 (おまけ)懲戒解雇には普通解雇が含まれないのが原則

 

今回ご紹介した事案において,会社は当初は懲戒解雇を行っていたのですが,裁判の時点で,「懲戒解雇には普通解雇が含まれる!」と主張していました。裁判ではこれは認められませんでした。

 

会社がこのような主張を行った理由は,解雇が有効となるためのハードルの高さが

 

懲戒解雇>普通解雇

 

であるため,「懲戒解雇では負ける。普通解雇にすりかえなければ!」という発想だったのでしょう(裁判では,よくある主張なんですが,かなり苦しい主張です。)

 

この点について,裁判所は,「懲戒解雇は,企業秩序違反に対する制裁罰として普通解雇とは制度上区別されたものであり,実際上も普通解雇に比し特別の不利益を労働者に与えるものであるから,懲戒解雇の意思表示はあくまで懲戒解雇として独自にその有効性を検討すべきであり,懲戒解雇の意思表示を事後的に普通解雇の意思表示に転換することは許されないと解すべきである。もっとも,使用者は,同一の非違行為につき,普通解雇事由にも該当するとして予備的に普通解雇の意思表示をすることは妨げられない。」とした上で,当事者の合理的な意思解釈として,「本件通告書による解雇の意思表示に予備的な普通解雇の意思表示が含まれていたと評価することはできない。」と判示しています。

 

以上です。

【関連サイトの記事】
・ 懲戒解雇とは?
・ 懲戒解雇への対応方法
・ 情報漏洩で懲戒解雇できるか?
 


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こんにちは。弁護士の吉村です。

本日も労働問題に関するホットな最新判例について弁護士としてコメントをさせていただきます。
ストーカー
本日の労働問題の判例は,
女性社員が社内で上司に盗撮されたこと関し、会社に対する損害賠償請求が否定された例です。

ある土建会社(千葉支店)の女性社員が,更衣室で着替えている状況を,直属の上司(千葉支店長)にデジタルビデオカメラで盗撮された,という事案です。女性社員は,会社に対して,使用者責任等を追及して慰謝料200万円を請求しました。なお,千葉支店の正規社員はこの女性社員と支店長の男性のみでした。また,女性社員は昭和38年生まれで,盗撮された当時40代後半でした。支店長は昭和24年生まれで,盗撮した当時60代でした。そして,この判決は,キャリア(修習46期)からしておそらく40代半ば~後半の女性裁判官によりなされました。結論としては請求棄却(労働者敗訴)。その理由は?
 

 

ポイント(これだけ読めば十分!)
① たとえ業務時間中であっても,上司が行った盗撮行為は個人的な欲望に基づく行為であり,会社の業務と関係ない以上,会社は使用者責任を負わない
② 
上司が犯罪行為を行ったとしても,会社にはそれを予測できない以上,防止する義務はない
③ 
会社が当該男性社員をすぐに懲戒解雇せず,また,懲戒解雇後に女性社員の要望に応じて公表しなかったとしても,誠実さを欠いていたとは言えない。


 判 例 情 報 

Ⅹ社事件

東京地裁(平成25925日)判決

労働経済判例速報 2195-3

 

 事 案 の 概 要 

【当事者】

X(原告):女性従業員(昭和38年生)。H8 正社員採用

Y(被告):土木建築の請負等を業務とする株式会社であり、東京都に本店がある。

B:千葉支店長(昭和24年生)

【事案の概要】

H23.6.29 Bは、午前836分ころから46分ころまでの間、Y千葉支店のロッカーにおいて、Xの着替えをのぞき見る目的で同室内の紙袋にデジタルビデオカメラを入れ、Xの姿を撮影して録音し、盗撮及び盗聴をした。それに気付いたXはビデオカメラを持って警察署へ行った。Bは任意で捜査される。

H23.7.1 BYへ退職届を出すが,Yは懲戒解雇をするかもしれないので受領せず。

H23.7.7 YはBを懲戒解雇

 

 結   論 

請求棄却(労働者敗訴)

 

 判   旨 

「原告は、被告千葉支店のロッカー室において、直接の上司であった千葉支店長のBから、私服から事務服に着替える様子をビデオカメラで撮影される被害を受けたことが認められるが、Bの本件盗撮行為は、原告が着替えをする姿を見たいというBの欲望を満たす行為であって、事業上の必要性に基づくものではなく、その態様も、被告の業務用のビデオカメラを使用しているものの、原告に気づかれないよう隠匿したビデオカメラで隠し撮りをするというものであって、Bの職務上の権限や上司としての地位を利用したものともいえないから、土木建築業者である被告の事業の範囲ではなく、被用者であるBの職務の範囲内に属する行為でもなく、その外形を備える行為でもない。したがって、本件盗撮行為は「事業の執行につき」行われたと認めることはできない。」

「本件盗撮行為は、原告の出勤後、Bがロッカー室に入って紙袋に隠匿したビデオカメラを作動させ、原告に知られぬまま、原告がロッカー室で着替える姿を撮影するというものであり、軽犯罪法に違反する犯罪行為であって(書証略)、Bにおいて原告はもちろん他の被告社員にも知られぬよう行うものであり、被告においてかかる本件盗撮行為を予測し、防止することはできなかったと認められる。そうすると、被告が本件盗撮行為を予測して、その防止のため女子更衣室を設けたり、ビデオカメラの保管を厳重に行ったりする義務があるとはいえず、本件盗撮行為が発生したことについて被告に防止義務違反があるとは認められない。」

 感 想 

事案に対する結論としては妥当なものかと思います。
ただ,ロジックとして,この裁判例のように
盗撮は業務と関係ない,秘密裏に行われるので会社は知り得ない,ということを理由に使用者責任や安全配慮義務違反を否定していますが,そうなると会社内で秘密裏に行われる変態的行為について,会社は守ってくれないのか?とも思えますね。
あくまでもこのケースについての判断ということなのだと思います。


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弁護士の吉村です。
 

最近は快調なペースでブログの更新をしております。

さて,今回も労働問題に関する判例について弁護士として解説させて頂きます。

今回は労働時間に関する最新の最高裁判例について。

またもや最近の労働審判で頻出の残業代請求事件についてです。労働審判に代理人弁護士として関与する場合,最近極めて多い事件類型です。

 

  ポイント(これだけ読めば十分!)  
① 会社側(使用者側)にて労働者の労働時間の把握し,残業がある場合は残業代を払わなければならないのが原則。

② 例外的に,例えば外回りの営業社員のように,労働者が何時まで働いたのかを会社で把握できない場合,一定時間働いたことと「みなす」制度が事業場外労働みなし制。

③ ただ,あくまでも例外的な制度なので,その適用要件は厳格に解釈される。要件の1つである「労働時間を算定し難い」という要件は,例えば外回りの営業社員であっても,携帯電話等によって随時指示を受けながら仕事をしているような場合,否定される。

④ 今回の最高裁の事案も,国内旅行の派遣添乗員のケースだが,詳細な旅行日程が組まれていて基本的には変更できないこと,日報,携帯電話の貸与などの事情からすると,「労働時間を算定し難い」とは言えないと判定された


 判 旨 

「本件添乗業務は,ツアーの旅行日程に従い,ツアー参加者に対する案内や必要な手続の代行などといったサービスを提供するものであるところ,ツアーの旅行日程は,本件会社とツアー参加者との間の契約内容としてその日時や目的地等を明らかにして定められており,その旅行日程につき,添乗員は,変更補償金の支払など契約上の問題が生じ得る変更が起こらないように,また,それには至らない場合でも変更が必要最小限のものとなるように旅程の管理等を行うことが求められている。そうすると,本件添乗業務は,旅行日程が上記のとおりその日時や目的地等を明らかにして定められることによって,業務の内容があらかじめ具体的に確定されており,添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られているものということができる。
 また,ツアーの開始前には,本件会社は,添乗員に対し,本件会社とツアー参加者との間の契約内容等を記載したパンフレットや最終日程表及びこれに沿った手配状況を示したアイテナリーにより具体的な目的地及びその場所において行うべき観光等の内容や手順等を示すとともに,添乗員用のマニュアルにより具体的な業務の内容を示し,これらに従った業務を行うことを命じている。
 そして,ツアーの実施中においても,本件会社は,添乗員に対し,携帯電話を所持して常時電源を入れておき,ツアー参加者との間で契約上の問題やクレームが生じ得る旅行日程の変更が必要となる場合には,本件会社に報告して指示を受けることを求めている。
 さらに,ツアーの終了後においては,本件会社は,添乗員に対し,前記のとおり旅程の管理等の状況を具体的に把握することができる添乗日報によって,業務の遂行の状況等の詳細かつ正確な報告を求めているところ,その報告の内容については,ツアー参加者のアンケートを参照することや関係者に問合せをすることによってその正確性を確認することができるものになっている。
 これらによれば,本件添乗業務について,本件会社は,添乗員との間で,あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で,予定された旅行日程に
途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ,旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされているということができる。
 以上のような業務の性質,内容やその遂行の態様,状況等,本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法,内容やその実施の態様,状況等に鑑みると,本件添乗業務については,これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと解するのが相当である。」 


事業場外みなし制についての詳細な解説は当事務所公式HPをご参照ください。

・ 事業場外みなし労働時間制とは?(外部リンク)
・ 事業場外みなし制のチェックポイント(外部リンク)

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退職届
こんにちは。弁護士の吉村です。

本日も労働問題に関する最新判例について弁護士としてコメントをさせていただきます。

本日の労働問題の判例は,退職の意思表示と動機の錯誤の有無の問題です。

退職勧奨を経て労働者が会社へ退職届を提出した後,「会社から脅されて提出したものなので,錯誤無効又脅迫を理由に取り消す」との主張がなされることがあります。今回の判例は,「錯誤無効」は単なる「動機の錯誤」に過ぎないと認定し,労働者側の訴えを退けました。

ここから会社の退職勧奨のやり方,退職届を受領する際の注意点を学びましょう。

 

 判 例 情 報 

プレナス事件

東京地裁(平成2565日)判決

労働経済判例速報 2191-3

 

 事 案 の 概 要 

【当事者】

X:当該労働者。H8 正社員採用

H19からは人事部所属

Y:弁当のフランチャイズ事業(ほっかほっか亭)などを行う

 

【事案の概要】

H23.9.1 XがYの退職年金制度変更に伴う退職予定金額を非難し,その旨を同僚約20名へメールを送信する。

H23.9.3 退職勧奨

H23.9.14 105日をもって退職する旨の退職願提出

 

 判   旨 

「原告は、本件退職願による退職の意思表示は、E部長の退職勧奨に応じなければ、懲戒解雇になり、その場合は退職金も支給されないものと誤解したためにされた錯誤によるものであり、無効である旨を主張」するが,
「原告が本件退職願を提出することを決断するに至った動機については曖昧で明らかではないし、」,また,退職勧奨に際して「E部長が懲戒処分や解雇の可能性、ましてや懲戒解雇による退職金不支給について言及したことはなく、原告も退職勧奨に応じなかった場合の処遇等に関して何ら言及していないこと」からすると,そもそも原告が「誤解があり、これに基づき本件退職願が提出されたとすることには疑問があるものといわざるを得ない。
仮に、原告が上記のような誤解に基づき本件退職願による退職の意思表示をしたものであるとしても、これは動機の錯誤であるといわざるを得ず、これが表示されていたことは一切うかがわれないのであるから、退職の意思表示につき要素の錯誤があったということはできない。」

 

ポイント

●労働者の退職届提出に意思表示の瑕疵があれば、無効・取り消しが主張可能

●退職勧奨の際は、言動に気をつける必要がある

●退職勧奨の会話は録音して残しておくといざという時に使える。

 

 解   説 

本来は解雇出来ないにもかかわらず,退職届を出さないと解雇になるなどと言って退職を迫った場合は,錯誤,詐欺,脅迫を理由に,退職の意思表示を無効とすること又は取り消される可能性があります。この種の労働問題は弁護士として時々相談を受けます。

 

裁判例でも,解雇事由に該当する事実もないのに解雇をちらつかせて恐怖心を生じさせ,従業員に退職の意思表示をさせる場合は,まさに上記強迫の故意が会社に認められますから,退職の意思表示は強迫によるものとして取り消されるとしています(澤井商店事件=大阪地決平元.327労判53616 ソニー〔早期割増退職金〕事件 東京地判平1449労判82956)。

 

今回紹介した裁判例の特徴は

退職勧奨を行った上司が,懲戒処分や解雇の可能性、懲戒解雇による退職金不支給,退職勧奨に応じなかった場合の処遇等に関して,何ら言及していないこと

に尽きます。

つまり,労働者へ恐怖心や錯誤を生じさせるような言動がなかった,と認定されたのです。

 

これに対し,労働者は,退職勧奨の際に,

「いや、いらん、人事部の仕事取り上げるんで仕事がなくなる、有休消化してやめたら」「会社では仕事ないので、店長として働けるかもしれない、働くとしても北海道、大阪、名古屋かもしれないけど」「やめたらよかねん」などとテーブルを叩くなどして罵声を浴びせられ退職を強要された

と主張していましたが,

裁判所はそのような事実は認められないと判示しました。

 

錯誤や強迫については,労働者に立証責任がありますので,裁判でのポイントは突き詰めればその証拠があるのか否か,ということになります。

 

この種の労働問題事案では,通常,退職勧奨の際の会話などがICレコーダーなどで録音され,それが証拠として提出されることが多いといえます。このような客観的証拠がない場合は,“言った言わないの世界”になり,証明責任を負う方が裁判では負けます

 

今回の労働問題事案では労働者は客観的証拠は出せませんでしたので,労働者の言い分について裁判所も認めませんでした。

 

仮に会社が退職勧奨の会話について録音をとり,かつ,実際に錯誤を誘発する強迫的言動がなされていないのであれば,それを証拠として提出出来れば,より確実に勝訴することができたでしょう。

 

このような事を考えますと,会社は,退職勧奨の面談の経緯を録音しておく,ということが,労働者の主張に対する反証をする意味で重要といえるでしょう。

もちろん,後々になって労働者に錯誤・強迫があったと主張されるような言動は行ってはいけません。最近では,労働者も退職勧奨の面談内容を録音していることが珍しくありませんので,基本的には録音されていると思いながら,言動には注意した方がよいでしょう。

 

なお,この労働問題についての弁護士による詳細な解説は公式サイト「退職届の無効・取り消しができる」 をご参照ください。

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皆様,新年明けましておめでとうございます。 

大変ご無沙汰しております。 

更新が非常に遅くて申し訳ありません。 

本年こそはブログの更新,頑張って参りたいと思いますので,今後とも,ご贔屓に。

(なんか,毎年この誓いを立てているんですが,日々の業務の忙しさにかまけてしまってしまうんですよね・・。) 

さて,本日は,巷で激増中の残業代請求事件の関連です。 労働審判も多発している事件類型です。

最近,本当に労働審判が増えていますね。この件で,経営者の方から弁護士としてご相談・ご依頼を受けることが非常に多くなっています。
その残業代請求を棄却させた,という経営者にとって非常に参考になる判例のご紹介です。


 imgres この様な機械の入退館記録が問題になりました。


ヒロセ電機事件
東京地裁(平成25年5月22日)判決 労経速2187-3
判決のポイント

① 入退館記録表(書証略)に打刻された入館時刻から退館時刻までの間、原告が被告の事業場にいたことは認められる。
 そして,一般論としては、労働者が事業場にいる時間は、特段の事情がない限り、労働に従事していたと推認すべきと考えられる。 

② しかし,
・ 被告における就業規則には、明確に、時間外勤務は所属長からの命令によって行われるものとされ、それ以外の時間外勤務は認めないとされていること

・ 実際の運用として、毎日、従業員本人の希望も参考にしながら、時間外勤務命令書の「命令時間」欄の記載によって時間外勤務命令が出され、翌朝、従業員本人が実際の時間外勤務時間を「実時間」欄に記入して申告し、所属長により確認が行われ、時間外労働が把撞されていたことが認められ,

・ 入退館記録表に打刻された入館時刻から退館時刻までの時間について、被告の客観的な指揮命令下に置かれた労働時間と推認することができない特段の事情があるといえる。
 
判決から得られる教訓
残業は,上司の命令がなければ認めない,というルールについて,就業規則などに明記するだけでなく,実際の日々の運用においても徹底すれば,労働者側の請求は恐くない。
吉村コメント(実務上の参考事項)

残業代請求事件では,どれだけ残業していたのか,が争点の1つとなります。 

そして,この残業時間については,労働者に証明責任があり,各種証拠を出して立証してきます。

【労働時間の証拠の例】

・タイムカード

・タイムレコーダー

・労働者がつけていた手帳

・PCログデータ

・グループウエア(exサイボウズ)のログイン・ログアウト記録

・警備システムの出退社記録

・タコグラフ 

今回の裁判例では,「入退館記録表」による労働時間の認定が問題となりました。 

判旨によれば,被告会社の1F通用口そばに機械が設置されており,従業員は入館及び退官の際に打刻することが義務づけられていたとのことです。 

労働者は,この「入退館記録表」の入館~退館の時間をもって労働時間だ!と主張し,残業代を請求していました。 

これに対し,会社側は,残業は所属長の命令によらなければ一切認めない,ということを就業規則に定め,かつ,実際に運用していた,それゆえ,「時間外勤務命令書」に記載されている時間こそが残業時間であり,それは既に支払い済みだ,と主張していました。 

判決の結論は,上記のとおり,会社側の言い分を全面的に認めました。 

残業は所属長の命令によらなければ認めない,ということを

①就業規則,労働契約書等に明記する

②実際に,日々の残業に際して,「時間外勤務命令書」による運用を徹底し,証拠に出せるように整備していたこと,

が重要です。 

特に,②実際の運用の徹底及び証拠化が重要ですね。 

というのも,①就業規則などに定める,ことまではどこの会社も結構やっているのですが,②実際の運用をやっていない会社が実際には多いのです。 

この①,②をきちっとやっていれば,労働者が別の証明をしようとしたとしても,会社は拒否できるのです。 

このように常日頃の整備が重要ですね。
 

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