弁護士の吉村です。
今回は労働問題に関する法律の改正動向について,弁護士としてコメントします。
昨日29日,労働問題である労働者派遣制度の見直し案に関し,労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の専門部会は,労使双方の意見を反映した最終報告が出しました。この報告を受け,厚労省は今国会に関連法案を提出し、成立を目指すことになりますので,この最終報告は事実上の改正案といえます。
これまで労働問題である派遣社員関係では,派遣契約解除・終了に伴う派遣元との有期契約解消などについて,弁護士として地位確認の労働審判などの労働問題対応をすることが多くありましたが,今回の改正は実務的にはかなり大きな影響を及ぼすものと思われます。
発想の変換
これまでは,労働者派遣=非正規労働者が拡大する制度なので,なるべく規制を強化して使いづらくして,正規雇用への転換を狙う,という方針でした。
しかし,実際には,厳しい規制の抜け道が多く(例えば,いわゆる専門26業務に該当しないにもかかわらず,該当すると勝手に解釈して派遣を行うなど)かえって,規制の外で労働者が保護されていない状況を生んでいました。また,規制が厳しく,多様な働き方を選択したいという労働者の要望が叶えられないという実情もありました。
そこで,今回の改正にあたっては「労働者派遣事業が労働力の需給調整において重要な役割を果たしていることを評価」し,労働者派遣事業の規制を緩やかにしつつ,「派遣労働者のキャリアアップや直接雇用の推進を図り、雇用の安定と処遇の改善を進めていく」という方向へ変更されました。
厳しく規制しても守られずに労働問題の無法地帯(ブラック企業)を生むくらいならば,規制を緩くした上で遵守を徹底させる方がよいということでしょう。
今後の実際の改正動向にも注目したいと思います。
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