労働問題.COM|弁護士による労働問題(労働審判,労働組合)の解説 

解雇,残業代,派遣,非正規社員,労働審判,労働組合,訴訟,仮処分などの労働問題について経験豊富な弁護士が分かりやすい解説をしています。

カテゴリ : 法律の解説

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弁護士の吉村です。

今回は労働問題に関する法律の改正動向について,弁護士としてコメントします。

昨日29日,労働問題である労働者派遣制度の見直し案に関し,労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の専門部会は,労使双方の意見を反映した最終報告が出しました。この報告を受け,厚労省は今国会に関連法案を提出し、成立を目指すことになりますので,この最終報告は事実上の改正案といえます。

これまで労働問題である派遣社員関係では,派遣契約解除・終了に伴う派遣元との有期契約解消などについて,弁護士として地位確認の労働審判などの労働問題対応をすることが多くありましたが,今回の改正は実務的にはかなり大きな影響を及ぼすものと思われます。


 ポイント(これだけ読めば十分!)  
① 企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上なくし,3年ごとに派遣労働者を交代することで同じ業務をずっと派遣社員に任せられるようになる。また,派遣社員が派遣元と無期契約を結んだ場合は,その派遣社員は期限なく派遣先企業で働けるようになる。

② また,現状では通訳や秘書など「専門26業務」の派遣社員は特別に期限なく働くことができるが,それ以外の業務は最長で3年までしか働けないという区分けになっている。しかし,この区分けは分かりにくく,実際には守られていないケースが多発していた。そこで,新制度ではこの専門26業務の区分けを廃止する。
 

③ 今後は派遣期間の上限は「人」で判断する。派遣元と無期の契約を結んだ派遣社員は派遣先で期限なく働けるようになる。派遣元と有期契約を結んだ派遣社員も,派遣先で最長3年働ける。他方で,3年ごとの切り替え時に正社員の職をおびやかさないかなどを労使でチェックする仕組みを取り入れる。
 

  派遣元の人材派遣会社の責任を重くした。派遣元に労働者の教育訓練を義務付けるほかに,3年の期間が終わった労働者に対し、(1)派遣先企業に直接雇用を申し入れる(2)新たな派遣先を提供する(3)最終的な受け皿として自社で無期雇用する等の措置を求める。

 また,現状では届け出制と許可制の2種類がある事業者について,今後は基準が厳しい許可制に一本化する。


 

発想の変換

 これまでは,労働者派遣=非正規労働者が拡大する制度なので,なるべく規制を強化して使いづらくして,正規雇用への転換を狙う,という方針でした。

 しかし,実際には,厳しい規制の抜け道が多く(例えば,いわゆる専門26業務に該当しないにもかかわらず,該当すると勝手に解釈して派遣を行うなど)かえって,規制の外で労働者が保護されていない状況を生んでいました。また,規制が厳しく,多様な働き方を選択したいという労働者の要望が叶えられないという実情もありました。

 そこで,今回の改正にあたっては「労働者派遣事業が労働力の需給調整において重要な役割を果たしていることを評価」し,労働者派遣事業の規制を緩やかにしつつ,「派遣労働者のキャリアアップや直接雇用の推進を図り、雇用の安定と処遇の改善を進めていく」という方向へ変更されました。

 厳しく規制しても守られずに労働問題の無法地帯(ブラック企業)を生むくらいならば,規制を緩くした上で遵守を徹底させる方がよいということでしょう。

 今後の実際の改正動向にも注目したいと思います。

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吉村です。

更新が遅れて済みません。

さて,今回は,改正高年齢者雇用安定法(略して高齢法)の実務ポイント第2弾です。

高齢法について考えた場合,経営者として最も頭を悩ませるのは,「コスト」だと思います。

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週刊東洋経済(H25.1.26号)の記事によれば,

高齢者全員を雇用すれば,なんと1.9兆円のコストが増大するそうです。





これは凄い金額ですね。企業の人件費に占める割合も10%を占めるようです。

企業としては,このコスト増に対し,どのように対応するべきか?が最大の実務ポイントではないでしょうか?

そこで,今回は,高齢法に伴う人件費コスト増への対応について検討したいと思います。

コスト増への対応としては,大きく分けると,

① 60歳到達後の高齢労働者のコストの削減
② 60歳到達前の従業員のコストの削減

ということになろうかと思います。

① 60歳到達後の高齢労働者のコストの削減

60歳到達後の高齢労働者全員について,60歳到達前と同じレベルの賃金を支払い続けることは一般的にコスト面で難しいでしょう。

厚生労働省の調査によれば,再雇用者の賃金の定年到達時賃金との比率は,60%~70%程度とする企業が最も多くなっています(厚生労働省平成20年「高年齢者雇用実態調査」より)。

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このような大幅な賃金引き下げが可能な理由は,1つは高齢法が,65歳までの雇用確保方法として「再雇用制度」を認めていることが挙げられます。

「再雇用制度」は,定年退職+新規の再雇用というプロセス

を経ることにより,従来の雇用契約が一旦リセットされ,新たに労働契約が締結されるため,労働条件の再設定がしやすいのです。

では,具体的に,「再雇用制度」によって労働契約をどのように設定することができるでしょうか?

ⅰ 雇用形態
まず,コスト面から,正社員(期間の定めなし)として処遇する企業は現実的にはないと思われます。

よって,期間の定めがある契約社員,パートタイマー,アルバイト及び嘱託社員などが大多数であると思われます。
 
ⅱ 契約期間
契約期間については,1年単位で設定し更新している企業が圧倒的に多いです。

有期雇用契約の期間は原則的には最長3年ですが,60歳以上の者との労働契約は最長5年まで認められています(労基法14条)。

しかし,実際には,上記の様に1年単位で設定しているのは,1年単位の労働契約をその契約期間満了により更新しない(雇い止め)することが出来るとの考えによるものと推測されます。

但し,従来からある判例の雇い止め法理はもちろん,改正労働契約法19条で同法理が立法化されており,雇い止めにも相応の理由が求められることは注意しなければなりません。
 
ⅲ 労働時間
必ずしもフルタイム勤務にする必要はなく,
 
a 1日の労働時間はそのままで,労働日数を減らす
b 労働日数はそのままで,1日の労働時間を短縮する
c 労働日数,労働時間数いずれも減らす

という方法があり得ます。
 
労働時間が減少すれば,その分,賃金額も減額することが出来,コストの調整が可能となります。
 
ⅳ 賃金
再雇用に際し,賃金についての設定も自由で,この点について直接的に強制力を伴う規制はありません

ただ,労働契約法20条が,同一労働同一賃金の原則から,期間の定めの有無によって生ずる労働条件の相違は,「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度・・,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであってはならない。」と定めます。

中小企業では,定年後も職務内容は全く変わらないのに,賃金は大幅に下げられるというケースは現実的には少なくありません。

すると,上記法律に違反するとして,定年前の水準による賃金を請求されるリスクがあります。

実務の対応としては,職務内容が定年前と変わらないとしても責任の程度を軽減する,人事異動の範囲を狭める等の配慮が必要であると共に,対象となる再雇用社員が訴訟を起こしたくなる程の不満を抱かせないことが大切になります。
 
以上の他,60再到達後は老齢年金や雇用保険の高年齢雇用継続給付が絡んできますので,これらを最大限活用した最適賃金を設計するという視点も重要となります。

今回はこのあたりで失礼します。

次回は,上記② 60歳到達前の従業員のコストの削減

について説明します。具体的には現役世代の賃金カーブの見直しがポイントになります。


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本日は,高年齢者雇用安定法について。

同法は既に改正され,来年4月1日より施行されることはご存じの方が多いと思いますが,結局ポイントは何なの?となるとあまり明確なものは少ないと思います。

そこで,この点について説明します。

実務上,最大のポイントは,

継続雇用の対象を労使協定で定める基準によって限定できる仕組みを廃止する

ことにあります。

なぜなら, 大多数の企業がこの仕組みを採用しており,廃止に伴い,希望者全員の継続雇用をしなければならず,業務や人件費の配分など,システムを変更する必要がある企業が多いからです。

【改正の経緯】

従来、同法では企業に対し、65歳までの雇用を確保するため

(1)定年の引き上げ
(2)継続雇用制度の導入
(3)定年廃止

のいずれかの制度を設けることを義務づけていました。

そして,(2)継続雇用については、労使協定で定めた基準に達しない場合、希望者を雇用しなくてもよい規定がありました。

つまり,会社の方で,「人事評価C以上の人」「会社の健康診断を受け問題のない人」等の基準を設け,この基準に満たない人は継続雇用の対象外にできたのです。 
 

(2)雇用確保措置を導入している企業のうち82・5%が継続雇用制度を導入しており,また、そのうち半数以上が基準を設け,基準に該当する者のみを継続雇用しています。

過去一年間で基準に達しないことを理由に再雇用されなかった労働者は約7000人にも上ると言われています。

他方で,お国の財政難から,年金開始年齢が上げられ,来年2013年度からは,継続雇用を希望していても、基準に該当せずに雇用継続されなかった結果,雇用も年金もない無収入の期間が生ずる人もでてくると言われています。

いまの国の予算では,雇用も年金もない人達をフォローする制度を構築できない,だったら企業でもってよ,ということで,今回法改正がなされました。 

つまり,法律改正により、継続雇用の対象者を限定する仕組みを廃止することになったのです。

その結果,希望者全員が原則として継続雇用されることになり,例外的に,就業規則で定められた解雇・退職に相当する客観的、合理的な理由があった場合にのみ、継続雇用の対象外になります。

【実務上の対応】
このように(2)継続雇用制度を導入している企業は,原則として希望者全員の雇用を継続しなければなりません。つまり,これまでは定めた基準に従って,雇用継続しないでもよかった層の労働者も雇用継続しなければならないのです。

売上も伸び悩み,業務も増加しない中での人員の増加,つまり,金も仕事も増えないのに,余剰人員だけが増えてしまうという構造になります。

それに対しては,単純に,金(人件費)と仕事(業務)を分け合う(分配する)しか方法はないでしょうね。


公表されている,経営者がとる方策は次のようなものです。

1 高齢従業員の貢献度を定期的に評価し、処遇へ反映する 44.2%
2 スキル・経験を活用できる業務には限りがあるため、提供可能な社内業務に従事させる 43.6%
3 半日勤務や週2~3日勤務などによる高齢従業員のワークシェアリングを実施する 41.0%
4 高齢従業員の処遇(賃金など)を引き下げる 30.0%
5 若手とペアを組んで仕事をさせ、後進の育成・技能伝承の機会を設ける 25.8%
6 60歳到達前・到達時に社外への再就職を支援する 24.1%
7 60歳到達前・到達時のグループ企業への出向・転籍機会を増やす 22.7%
8 新規採用数を抑制する 16.9%
9 60歳到達前の従業員の処遇を引き下げる 13.3%
10 社内には高齢従業員に提示する業務がないため、従来アウトソーシシングしていた業務を内製化したうえで従事させる 11.7%
11 特段の対応はしない 9.4%
12 高齢従業員の勤務地エリアを拡大する 8.9%
13 その他 7.2%

 (出典:2012 年10 月25 日 日本経済団体連合会 「2012 年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」 「高年齢者雇用安定法の改正にともない必要となる対応(複数回答)」)

そして,先日出された2013年の春闘に向け、経営側の指針となる経団連の「経営労働政策委員会報告」原案では,


原案では13年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行に伴い、65歳までの継続雇用の比率が現在の74%から90%に上昇した場合、総賃金額は今後5年間で2%押し上げられると試算した。

試算を踏まえ、企業の人件費を抑えながら雇用を維持するには「賃金カーブの全体的な見直しが考えられる」と指摘。

中高年を中心とする現役世代の賃金抑制を求めた。特に中高年の給与が年功的になっている場合には「仕事・役割・貢献度を基軸とする賃金制度に再構築していくことが考えられる」と提案した。」となっています。

以上,ざくっとした内容ですが,実務ポイントを示しました。

もう少し具体的に書式等にも踏み込んだ解説は追ってさせていただきます。

~おわり~
 




 













 




 

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