IMG_5178
弁護士の吉村です。

今回は労働問題に関する法律の改正動向について,弁護士としてコメントします。

昨日29日,労働問題である労働者派遣制度の見直し案に関し,労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の専門部会は,労使双方の意見を反映した最終報告が出しました。この報告を受け,厚労省は今国会に関連法案を提出し、成立を目指すことになりますので,この最終報告は事実上の改正案といえます。

これまで労働問題である派遣社員関係では,派遣契約解除・終了に伴う派遣元との有期契約解消などについて,弁護士として地位確認の労働審判などの労働問題対応をすることが多くありましたが,今回の改正は実務的にはかなり大きな影響を及ぼすものと思われます。


 ポイント(これだけ読めば十分!)  
① 企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上なくし,3年ごとに派遣労働者を交代することで同じ業務をずっと派遣社員に任せられるようになる。また,派遣社員が派遣元と無期契約を結んだ場合は,その派遣社員は期限なく派遣先企業で働けるようになる。

② また,現状では通訳や秘書など「専門26業務」の派遣社員は特別に期限なく働くことができるが,それ以外の業務は最長で3年までしか働けないという区分けになっている。しかし,この区分けは分かりにくく,実際には守られていないケースが多発していた。そこで,新制度ではこの専門26業務の区分けを廃止する。
 

③ 今後は派遣期間の上限は「人」で判断する。派遣元と無期の契約を結んだ派遣社員は派遣先で期限なく働けるようになる。派遣元と有期契約を結んだ派遣社員も,派遣先で最長3年働ける。他方で,3年ごとの切り替え時に正社員の職をおびやかさないかなどを労使でチェックする仕組みを取り入れる。
 

  派遣元の人材派遣会社の責任を重くした。派遣元に労働者の教育訓練を義務付けるほかに,3年の期間が終わった労働者に対し、(1)派遣先企業に直接雇用を申し入れる(2)新たな派遣先を提供する(3)最終的な受け皿として自社で無期雇用する等の措置を求める。

 また,現状では届け出制と許可制の2種類がある事業者について,今後は基準が厳しい許可制に一本化する。


 

発想の変換

 これまでは,労働者派遣=非正規労働者が拡大する制度なので,なるべく規制を強化して使いづらくして,正規雇用への転換を狙う,という方針でした。

 しかし,実際には,厳しい規制の抜け道が多く(例えば,いわゆる専門26業務に該当しないにもかかわらず,該当すると勝手に解釈して派遣を行うなど)かえって,規制の外で労働者が保護されていない状況を生んでいました。また,規制が厳しく,多様な働き方を選択したいという労働者の要望が叶えられないという実情もありました。

 そこで,今回の改正にあたっては「労働者派遣事業が労働力の需給調整において重要な役割を果たしていることを評価」し,労働者派遣事業の規制を緩やかにしつつ,「派遣労働者のキャリアアップや直接雇用の推進を図り、雇用の安定と処遇の改善を進めていく」という方向へ変更されました。

 厳しく規制しても守られずに労働問題の無法地帯(ブラック企業)を生むくらいならば,規制を緩くした上で遵守を徹底させる方がよいということでしょう。

 今後の実際の改正動向にも注目したいと思います。

弁護士ブログ人気ランキングに参加しています。
クリックをお願いします。