こんにちは。弁護士の吉村です。

本日も労働問題に関する実務について弁護士としてコメントをさせていただきます。

小保方 退職
 


本日の労働問題のトピックは,
小保方晴子さん,退職です。

いわずとしれた「STAP細胞」論文問題。平成26年4月1日,理研は,画像の改ざん及びねつ造の研究不正があったと断じ,発表しました。その後,小保方さん自らも加わって,STAP細胞の再現性について検証が進められていました。しかし,10ヶ月以上経過しましたが,結局再現出来ず,懲戒解雇必至な状況になり,今般小保方さんから退職の意向がだされ,理研も受理しました。 


科学者,研究者,学者が発表する学術論文において,盗用や剽窃,捏造などの不正行為があった場合,労働法的にはどのような対応となるのでしょうか?どうして小保方さんは退職したのでしょうか?

 

ポイント(これだけ読めばOK)① 実務では,論文の捏造はもちろん,盗用・剽窃についても,所属する研究機関の信用を損なう重大な行為として重く処分され,懲戒解雇も例外ではない。特に捏造(再現性なし)が最も重く処分されている。
② 小保方さんは,論文の改竄のみならず,結局,再現性の部分においても捏造があったと評価された。ここで懲戒解雇はほぼ確実な状況となった。
③ 懲戒解雇を回避する手段は2つ。1つ目は争うこと。2つ目は懲戒解雇される前に辞めること。STAP細胞を再現できず争うことは出来ない以上,小保方さんは辞めるしかなかった。 
④ 理研は,退職届を受理せずに,懲戒解雇を行うということも出来た。しかし,理研はそうせずに退職を承認した。これに対しては,「懲戒処分の結論を出す前に退職を認めるのはおかしい」との批判も出ている。理研の温情的措置といえる。 


1 捏造(再現性なし)は重く処分されるの?

では,データをでっちあげ再現性のない論文を発表するなどの捏造はどうでしょうか?

裁判例

比較的最近の裁判例では,東大元教授の多比良和誠氏が発表した論文が「再現性、信頼性はない」として懲戒解雇された事案で,「本件各論文は、いずれも再現性がないものであり、これらは科学学術論文であるから、これらを東京大学の教授である多比良が責任著者として作成、発表 をしたことによって、東京大学の名誉や信用が著しく傷つけられたことは明らかである」として東大の懲戒解雇を有効と判断しました(東京地裁平成21年1月29日判決 第二審も結論維持 上告)。

要は,捏造なんかやったら,所属機関の信用丸潰れ,ということです。

公表されている過去の処分事例

また,新聞などで公表されている大学等の研究機関における論文捏造事案における処分が以下のとおりです。※1

処分 件数(総数33件)
懲戒解雇 13
諭旨退職  1
除名  1
立証不能,処分なし  3
自主退職  1
論文撤回のみ  4
停職  3
訓告  2
学位取消  3
調査中  1
引責辞任  1

 

これを見ると,論文の捏造は,盗用・剽窃以上に解雇・退職を含む重い処分がなされているのが分かります。

 

2 小保方さんはどうして退職したの?

(1) 懲戒解雇を回避する方法

まず,懲戒解雇を回避する方法は一般に2つあります。

① 懲戒解雇を争うこと!
② 懲戒解雇がなされる前に自ら辞めること!

です。

(2) ①懲戒解雇を争う方法

懲戒解雇は,普通解雇に比べて極めて厳格な要件の下その有効性が判断されます。たとえ就業規則の懲戒解雇事由に形式的には該当したとしても,具体的事情のもとで使用者の懲戒権の行使が客観的に合理的理由を欠いており,社会通念上相当として是認することが出来ない場合には権利濫用として無効とされるのです(労働契約法15条,同法16条)。

しかし,
今回,論文の盗用・改竄問題に加え,そもそもSTAP細胞が再現出来なかったという致命的な問題がありますので,懲戒解雇のハードルがいくら高いといっても懲戒解雇を争うことは難しいでしょう。

(3) ②懲戒解雇される前に辞める方法

懲戒解雇は,雇用契約が存続していることを前提に行えるものです。つまり,退職して雇用契約が消滅した後は行えません。

そこで,懲戒解雇をされる前に辞める,という当たり前の方法があるのです。

ただし,退職願いが出されていても、すぐに退職の効力が当然に発生する訳ではありません。
民法第627条によって、特約がない限り①原則として2週間を経過したとき、②月給者の場合には、賃金計算期間の前半に申し入れたとき、次期の初日をもって雇用契約は終了することになります。

つまり,理研は,退職を承認せず、懲戒解雇をすることも可能だったのです。

今回,理研は小保方さんの退職を承認しました。

これに対しては,「理研は懲戒処分の結論を出す前に退職を承認すべきではなかった。真相解明及び懲戒処分を実施しないと再発防止にならない」との批判もありえます。

結局は,小保方さんの将来を考慮しての温情措置なのだと思います。




【参考サイト】
・ 懲戒解雇とは?
・ 退職届けを提出した後に懲戒解雇することはできるか?
 ・   解雇で弁護士に相談したい場合なら





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