労働問題.COM|弁護士による労働問題(労働審判,労働組合)の解説 

解雇,残業代,派遣,非正規社員,労働審判,労働組合,訴訟,仮処分などの労働問題について経験豊富な弁護士が分かりやすい解説をしています。

2014年01月

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弁護士の吉村です。

今回は労働問題に関する法律の改正動向について,弁護士としてコメントします。

昨日29日,労働問題である労働者派遣制度の見直し案に関し,労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の専門部会は,労使双方の意見を反映した最終報告が出しました。この報告を受け,厚労省は今国会に関連法案を提出し、成立を目指すことになりますので,この最終報告は事実上の改正案といえます。

これまで労働問題である派遣社員関係では,派遣契約解除・終了に伴う派遣元との有期契約解消などについて,弁護士として地位確認の労働審判などの労働問題対応をすることが多くありましたが,今回の改正は実務的にはかなり大きな影響を及ぼすものと思われます。


 ポイント(これだけ読めば十分!)  
① 企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上なくし,3年ごとに派遣労働者を交代することで同じ業務をずっと派遣社員に任せられるようになる。また,派遣社員が派遣元と無期契約を結んだ場合は,その派遣社員は期限なく派遣先企業で働けるようになる。

② また,現状では通訳や秘書など「専門26業務」の派遣社員は特別に期限なく働くことができるが,それ以外の業務は最長で3年までしか働けないという区分けになっている。しかし,この区分けは分かりにくく,実際には守られていないケースが多発していた。そこで,新制度ではこの専門26業務の区分けを廃止する。
 

③ 今後は派遣期間の上限は「人」で判断する。派遣元と無期の契約を結んだ派遣社員は派遣先で期限なく働けるようになる。派遣元と有期契約を結んだ派遣社員も,派遣先で最長3年働ける。他方で,3年ごとの切り替え時に正社員の職をおびやかさないかなどを労使でチェックする仕組みを取り入れる。
 

  派遣元の人材派遣会社の責任を重くした。派遣元に労働者の教育訓練を義務付けるほかに,3年の期間が終わった労働者に対し、(1)派遣先企業に直接雇用を申し入れる(2)新たな派遣先を提供する(3)最終的な受け皿として自社で無期雇用する等の措置を求める。

 また,現状では届け出制と許可制の2種類がある事業者について,今後は基準が厳しい許可制に一本化する。


 

発想の変換

 これまでは,労働者派遣=非正規労働者が拡大する制度なので,なるべく規制を強化して使いづらくして,正規雇用への転換を狙う,という方針でした。

 しかし,実際には,厳しい規制の抜け道が多く(例えば,いわゆる専門26業務に該当しないにもかかわらず,該当すると勝手に解釈して派遣を行うなど)かえって,規制の外で労働者が保護されていない状況を生んでいました。また,規制が厳しく,多様な働き方を選択したいという労働者の要望が叶えられないという実情もありました。

 そこで,今回の改正にあたっては「労働者派遣事業が労働力の需給調整において重要な役割を果たしていることを評価」し,労働者派遣事業の規制を緩やかにしつつ,「派遣労働者のキャリアアップや直接雇用の推進を図り、雇用の安定と処遇の改善を進めていく」という方向へ変更されました。

 厳しく規制しても守られずに労働問題の無法地帯(ブラック企業)を生むくらいならば,規制を緩くした上で遵守を徹底させる方がよいということでしょう。

 今後の実際の改正動向にも注目したいと思います。

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弁護士の吉村です。
 

最近は快調なペースでブログの更新をしております。

さて,今回も労働問題に関する判例について弁護士として解説させて頂きます。

今回は労働時間に関する最新の最高裁判例について。

またもや最近の労働審判で頻出の残業代請求事件についてです。労働審判に代理人弁護士として関与する場合,最近極めて多い事件類型です。

 

  ポイント(これだけ読めば十分!)  
① 会社側(使用者側)にて労働者の労働時間の把握し,残業がある場合は残業代を払わなければならないのが原則。

② 例外的に,例えば外回りの営業社員のように,労働者が何時まで働いたのかを会社で把握できない場合,一定時間働いたことと「みなす」制度が事業場外労働みなし制。

③ ただ,あくまでも例外的な制度なので,その適用要件は厳格に解釈される。要件の1つである「労働時間を算定し難い」という要件は,例えば外回りの営業社員であっても,携帯電話等によって随時指示を受けながら仕事をしているような場合,否定される。

④ 今回の最高裁の事案も,国内旅行の派遣添乗員のケースだが,詳細な旅行日程が組まれていて基本的には変更できないこと,日報,携帯電話の貸与などの事情からすると,「労働時間を算定し難い」とは言えないと判定された


 判 旨 

「本件添乗業務は,ツアーの旅行日程に従い,ツアー参加者に対する案内や必要な手続の代行などといったサービスを提供するものであるところ,ツアーの旅行日程は,本件会社とツアー参加者との間の契約内容としてその日時や目的地等を明らかにして定められており,その旅行日程につき,添乗員は,変更補償金の支払など契約上の問題が生じ得る変更が起こらないように,また,それには至らない場合でも変更が必要最小限のものとなるように旅程の管理等を行うことが求められている。そうすると,本件添乗業務は,旅行日程が上記のとおりその日時や目的地等を明らかにして定められることによって,業務の内容があらかじめ具体的に確定されており,添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られているものということができる。
 また,ツアーの開始前には,本件会社は,添乗員に対し,本件会社とツアー参加者との間の契約内容等を記載したパンフレットや最終日程表及びこれに沿った手配状況を示したアイテナリーにより具体的な目的地及びその場所において行うべき観光等の内容や手順等を示すとともに,添乗員用のマニュアルにより具体的な業務の内容を示し,これらに従った業務を行うことを命じている。
 そして,ツアーの実施中においても,本件会社は,添乗員に対し,携帯電話を所持して常時電源を入れておき,ツアー参加者との間で契約上の問題やクレームが生じ得る旅行日程の変更が必要となる場合には,本件会社に報告して指示を受けることを求めている。
 さらに,ツアーの終了後においては,本件会社は,添乗員に対し,前記のとおり旅程の管理等の状況を具体的に把握することができる添乗日報によって,業務の遂行の状況等の詳細かつ正確な報告を求めているところ,その報告の内容については,ツアー参加者のアンケートを参照することや関係者に問合せをすることによってその正確性を確認することができるものになっている。
 これらによれば,本件添乗業務について,本件会社は,添乗員との間で,あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で,予定された旅行日程に
途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ,旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされているということができる。
 以上のような業務の性質,内容やその遂行の態様,状況等,本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法,内容やその実施の態様,状況等に鑑みると,本件添乗業務については,これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと解するのが相当である。」 


事業場外みなし制についての詳細な解説は当事務所公式HPをご参照ください。

・ 事業場外みなし労働時間制とは?(外部リンク)
・ 事業場外みなし制のチェックポイント(外部リンク)

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退職届
こんにちは。弁護士の吉村です。

本日も労働問題に関する最新判例について弁護士としてコメントをさせていただきます。

本日の労働問題の判例は,退職の意思表示と動機の錯誤の有無の問題です。

退職勧奨を経て労働者が会社へ退職届を提出した後,「会社から脅されて提出したものなので,錯誤無効又脅迫を理由に取り消す」との主張がなされることがあります。今回の判例は,「錯誤無効」は単なる「動機の錯誤」に過ぎないと認定し,労働者側の訴えを退けました。

ここから会社の退職勧奨のやり方,退職届を受領する際の注意点を学びましょう。

 

 判 例 情 報 

プレナス事件

東京地裁(平成2565日)判決

労働経済判例速報 2191-3

 

 事 案 の 概 要 

【当事者】

X:当該労働者。H8 正社員採用

H19からは人事部所属

Y:弁当のフランチャイズ事業(ほっかほっか亭)などを行う

 

【事案の概要】

H23.9.1 XがYの退職年金制度変更に伴う退職予定金額を非難し,その旨を同僚約20名へメールを送信する。

H23.9.3 退職勧奨

H23.9.14 105日をもって退職する旨の退職願提出

 

 判   旨 

「原告は、本件退職願による退職の意思表示は、E部長の退職勧奨に応じなければ、懲戒解雇になり、その場合は退職金も支給されないものと誤解したためにされた錯誤によるものであり、無効である旨を主張」するが,
「原告が本件退職願を提出することを決断するに至った動機については曖昧で明らかではないし、」,また,退職勧奨に際して「E部長が懲戒処分や解雇の可能性、ましてや懲戒解雇による退職金不支給について言及したことはなく、原告も退職勧奨に応じなかった場合の処遇等に関して何ら言及していないこと」からすると,そもそも原告が「誤解があり、これに基づき本件退職願が提出されたとすることには疑問があるものといわざるを得ない。
仮に、原告が上記のような誤解に基づき本件退職願による退職の意思表示をしたものであるとしても、これは動機の錯誤であるといわざるを得ず、これが表示されていたことは一切うかがわれないのであるから、退職の意思表示につき要素の錯誤があったということはできない。」

 

ポイント

●労働者の退職届提出に意思表示の瑕疵があれば、無効・取り消しが主張可能

●退職勧奨の際は、言動に気をつける必要がある

●退職勧奨の会話は録音して残しておくといざという時に使える。

 

 解   説 

本来は解雇出来ないにもかかわらず,退職届を出さないと解雇になるなどと言って退職を迫った場合は,錯誤,詐欺,脅迫を理由に,退職の意思表示を無効とすること又は取り消される可能性があります。この種の労働問題は弁護士として時々相談を受けます。

 

裁判例でも,解雇事由に該当する事実もないのに解雇をちらつかせて恐怖心を生じさせ,従業員に退職の意思表示をさせる場合は,まさに上記強迫の故意が会社に認められますから,退職の意思表示は強迫によるものとして取り消されるとしています(澤井商店事件=大阪地決平元.327労判53616 ソニー〔早期割増退職金〕事件 東京地判平1449労判82956)。

 

今回紹介した裁判例の特徴は

退職勧奨を行った上司が,懲戒処分や解雇の可能性、懲戒解雇による退職金不支給,退職勧奨に応じなかった場合の処遇等に関して,何ら言及していないこと

に尽きます。

つまり,労働者へ恐怖心や錯誤を生じさせるような言動がなかった,と認定されたのです。

 

これに対し,労働者は,退職勧奨の際に,

「いや、いらん、人事部の仕事取り上げるんで仕事がなくなる、有休消化してやめたら」「会社では仕事ないので、店長として働けるかもしれない、働くとしても北海道、大阪、名古屋かもしれないけど」「やめたらよかねん」などとテーブルを叩くなどして罵声を浴びせられ退職を強要された

と主張していましたが,

裁判所はそのような事実は認められないと判示しました。

 

錯誤や強迫については,労働者に立証責任がありますので,裁判でのポイントは突き詰めればその証拠があるのか否か,ということになります。

 

この種の労働問題事案では,通常,退職勧奨の際の会話などがICレコーダーなどで録音され,それが証拠として提出されることが多いといえます。このような客観的証拠がない場合は,“言った言わないの世界”になり,証明責任を負う方が裁判では負けます

 

今回の労働問題事案では労働者は客観的証拠は出せませんでしたので,労働者の言い分について裁判所も認めませんでした。

 

仮に会社が退職勧奨の会話について録音をとり,かつ,実際に錯誤を誘発する強迫的言動がなされていないのであれば,それを証拠として提出出来れば,より確実に勝訴することができたでしょう。

 

このような事を考えますと,会社は,退職勧奨の面談の経緯を録音しておく,ということが,労働者の主張に対する反証をする意味で重要といえるでしょう。

もちろん,後々になって労働者に錯誤・強迫があったと主張されるような言動は行ってはいけません。最近では,労働者も退職勧奨の面談内容を録音していることが珍しくありませんので,基本的には録音されていると思いながら,言動には注意した方がよいでしょう。

 

なお,この労働問題についての弁護士による詳細な解説は公式サイト「退職届の無効・取り消しができる」 をご参照ください。

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皆様,新年明けましておめでとうございます。 

大変ご無沙汰しております。 

更新が非常に遅くて申し訳ありません。 

本年こそはブログの更新,頑張って参りたいと思いますので,今後とも,ご贔屓に。

(なんか,毎年この誓いを立てているんですが,日々の業務の忙しさにかまけてしまってしまうんですよね・・。) 

さて,本日は,巷で激増中の残業代請求事件の関連です。 労働審判も多発している事件類型です。

最近,本当に労働審判が増えていますね。この件で,経営者の方から弁護士としてご相談・ご依頼を受けることが非常に多くなっています。
その残業代請求を棄却させた,という経営者にとって非常に参考になる判例のご紹介です。


 imgres この様な機械の入退館記録が問題になりました。


ヒロセ電機事件
東京地裁(平成25年5月22日)判決 労経速2187-3
判決のポイント

① 入退館記録表(書証略)に打刻された入館時刻から退館時刻までの間、原告が被告の事業場にいたことは認められる。
 そして,一般論としては、労働者が事業場にいる時間は、特段の事情がない限り、労働に従事していたと推認すべきと考えられる。 

② しかし,
・ 被告における就業規則には、明確に、時間外勤務は所属長からの命令によって行われるものとされ、それ以外の時間外勤務は認めないとされていること

・ 実際の運用として、毎日、従業員本人の希望も参考にしながら、時間外勤務命令書の「命令時間」欄の記載によって時間外勤務命令が出され、翌朝、従業員本人が実際の時間外勤務時間を「実時間」欄に記入して申告し、所属長により確認が行われ、時間外労働が把撞されていたことが認められ,

・ 入退館記録表に打刻された入館時刻から退館時刻までの時間について、被告の客観的な指揮命令下に置かれた労働時間と推認することができない特段の事情があるといえる。
 
判決から得られる教訓
残業は,上司の命令がなければ認めない,というルールについて,就業規則などに明記するだけでなく,実際の日々の運用においても徹底すれば,労働者側の請求は恐くない。
吉村コメント(実務上の参考事項)

残業代請求事件では,どれだけ残業していたのか,が争点の1つとなります。 

そして,この残業時間については,労働者に証明責任があり,各種証拠を出して立証してきます。

【労働時間の証拠の例】

・タイムカード

・タイムレコーダー

・労働者がつけていた手帳

・PCログデータ

・グループウエア(exサイボウズ)のログイン・ログアウト記録

・警備システムの出退社記録

・タコグラフ 

今回の裁判例では,「入退館記録表」による労働時間の認定が問題となりました。 

判旨によれば,被告会社の1F通用口そばに機械が設置されており,従業員は入館及び退官の際に打刻することが義務づけられていたとのことです。 

労働者は,この「入退館記録表」の入館~退館の時間をもって労働時間だ!と主張し,残業代を請求していました。 

これに対し,会社側は,残業は所属長の命令によらなければ一切認めない,ということを就業規則に定め,かつ,実際に運用していた,それゆえ,「時間外勤務命令書」に記載されている時間こそが残業時間であり,それは既に支払い済みだ,と主張していました。 

判決の結論は,上記のとおり,会社側の言い分を全面的に認めました。 

残業は所属長の命令によらなければ認めない,ということを

①就業規則,労働契約書等に明記する

②実際に,日々の残業に際して,「時間外勤務命令書」による運用を徹底し,証拠に出せるように整備していたこと,

が重要です。 

特に,②実際の運用の徹底及び証拠化が重要ですね。 

というのも,①就業規則などに定める,ことまではどこの会社も結構やっているのですが,②実際の運用をやっていない会社が実際には多いのです。 

この①,②をきちっとやっていれば,労働者が別の証明をしようとしたとしても,会社は拒否できるのです。 

このように常日頃の整備が重要ですね。
 

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