吉村です。

更新が遅れて済みません。

さて,今回は,改正高年齢者雇用安定法(略して高齢法)の実務ポイント第2弾です。

高齢法について考えた場合,経営者として最も頭を悩ませるのは,「コスト」だと思います。

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週刊東洋経済(H25.1.26号)の記事によれば,

高齢者全員を雇用すれば,なんと1.9兆円のコストが増大するそうです。





これは凄い金額ですね。企業の人件費に占める割合も10%を占めるようです。

企業としては,このコスト増に対し,どのように対応するべきか?が最大の実務ポイントではないでしょうか?

そこで,今回は,高齢法に伴う人件費コスト増への対応について検討したいと思います。

コスト増への対応としては,大きく分けると,

① 60歳到達後の高齢労働者のコストの削減
② 60歳到達前の従業員のコストの削減

ということになろうかと思います。

① 60歳到達後の高齢労働者のコストの削減

60歳到達後の高齢労働者全員について,60歳到達前と同じレベルの賃金を支払い続けることは一般的にコスト面で難しいでしょう。

厚生労働省の調査によれば,再雇用者の賃金の定年到達時賃金との比率は,60%~70%程度とする企業が最も多くなっています(厚生労働省平成20年「高年齢者雇用実態調査」より)。

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このような大幅な賃金引き下げが可能な理由は,1つは高齢法が,65歳までの雇用確保方法として「再雇用制度」を認めていることが挙げられます。

「再雇用制度」は,定年退職+新規の再雇用というプロセス

を経ることにより,従来の雇用契約が一旦リセットされ,新たに労働契約が締結されるため,労働条件の再設定がしやすいのです。

では,具体的に,「再雇用制度」によって労働契約をどのように設定することができるでしょうか?

ⅰ 雇用形態
まず,コスト面から,正社員(期間の定めなし)として処遇する企業は現実的にはないと思われます。

よって,期間の定めがある契約社員,パートタイマー,アルバイト及び嘱託社員などが大多数であると思われます。
 
ⅱ 契約期間
契約期間については,1年単位で設定し更新している企業が圧倒的に多いです。

有期雇用契約の期間は原則的には最長3年ですが,60歳以上の者との労働契約は最長5年まで認められています(労基法14条)。

しかし,実際には,上記の様に1年単位で設定しているのは,1年単位の労働契約をその契約期間満了により更新しない(雇い止め)することが出来るとの考えによるものと推測されます。

但し,従来からある判例の雇い止め法理はもちろん,改正労働契約法19条で同法理が立法化されており,雇い止めにも相応の理由が求められることは注意しなければなりません。
 
ⅲ 労働時間
必ずしもフルタイム勤務にする必要はなく,
 
a 1日の労働時間はそのままで,労働日数を減らす
b 労働日数はそのままで,1日の労働時間を短縮する
c 労働日数,労働時間数いずれも減らす

という方法があり得ます。
 
労働時間が減少すれば,その分,賃金額も減額することが出来,コストの調整が可能となります。
 
ⅳ 賃金
再雇用に際し,賃金についての設定も自由で,この点について直接的に強制力を伴う規制はありません

ただ,労働契約法20条が,同一労働同一賃金の原則から,期間の定めの有無によって生ずる労働条件の相違は,「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度・・,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであってはならない。」と定めます。

中小企業では,定年後も職務内容は全く変わらないのに,賃金は大幅に下げられるというケースは現実的には少なくありません。

すると,上記法律に違反するとして,定年前の水準による賃金を請求されるリスクがあります。

実務の対応としては,職務内容が定年前と変わらないとしても責任の程度を軽減する,人事異動の範囲を狭める等の配慮が必要であると共に,対象となる再雇用社員が訴訟を起こしたくなる程の不満を抱かせないことが大切になります。
 
以上の他,60再到達後は老齢年金や雇用保険の高年齢雇用継続給付が絡んできますので,これらを最大限活用した最適賃金を設計するという視点も重要となります。

今回はこのあたりで失礼します。

次回は,上記② 60歳到達前の従業員のコストの削減

について説明します。具体的には現役世代の賃金カーブの見直しがポイントになります。


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