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弁護士の吉村です。

久々の更新となりすいません。

本日は,残業代請求対応に関連してお話したいと思います。

会社は残業代請求に際して,タイムカードを隠せるか?です。

会社によっては業務の内容や性質から,従業員に対して,毎日ある程度は残業をしてもらわざるを得ないことがあります。

すると,原則として 残業代を支払わねばなりません。毎日数時間ずつであっても,これが積み重なるとトンデモない金額になることがよくあります。数百万の残業代を従業員から請求される,なんてことはざらにあるのです。

よくあるのが,退職と同時に行われる従業員からの残業代請求です。
退職により会社との雇用関係がなくなるので,気兼ねなしに請求をすることが出来るのでしょう。

ただ,残業を請求する場合,法律的には,残業の事実は労働者に立証責任があります

つまり,労働者が,タイムカード等によって証明を出来なければ,裁判所は原則として残業を認めないのです。

そこで,抜け目のない労働者は,退職する前にタイムカードをコピー(写メールなどの場合もある。これも証拠になる。)するなどして証拠をきちっと確保しています。

これに対して,タイムカードなどの資料を持たずに残業代を請求したい労働者は,会社にタイムカード等の資料の開示を求めてくることがあります

ただ,会社としては,証拠となるタイムカードなんか出したくない,というのが本音でしょう。出してしまえば,残業がある場合は,確実な証拠になってしまいます。これに対する有効な反論(管理監督者,固定みなし残業代の支給等)が無いような場合はなおさらそうでしょう。

その場合,会社はタイムカードを隠してしまうことは出来るのでしょうか?

結論
・労働者は証拠保全手続,文書提出命令等の手段があり,結局出さなければならない羽目に。
・さっさと出して減額した金額での和解をすることが合理的な解決につながることも多い。 


会社がタイムカードを提出しない場合,労働者は何をしてくるか?

① 労働基準監督署への通告
これは労働者からしますと,お金もかからずに出来る手段ですので,実務では割を利用されることが多いと言えます。通告がなされると,労基署より会社へ確認の電話などがかかってきますし,呼出を受けて事情聴取を受けることもあります。場合によっては,労基署が会社に乗り込んで調査をすることや,是正勧告を行うこともあります。
労働基準監督官が会社に来るのは,他の従業員への影響などを考えると,好ましいことではないですし,役人にずかずかと会社に立ち入られることを嫌がる経営者も多いです。

② 証拠保全手続(民訴法234条)
証拠保全は,訴え提起前に行なうことも可能な裁判所が行う証拠調べです。
ある日,突然,執行官が,証拠保全の決定書を持って会社に来ます。そして,その1時間後くらいに,裁判官と裁判所書記官,カメラマンが会社に来ます。そして,タイムカードを出すように命じられます。そして,タイムカードをコピーするか,またはカメラマンがパシャパシャと撮影して帰ります。これにより労働者はタイムカードを入手することができます。
これは,会社にとってかなりインパクトがありますね。 いきなり執行官から決定書を渡され,その直後に裁判官が会社に訪れますと,会社内はかなりざわつきます。経営者ははっきり言ってビビリますよ。
この手続は社労士も知らない人が多く,それが故に,気安く「社長,タイムカードなんて出す必要ないですよ!」とアドバイスする人がいますが,証拠保全手続でかちこまれるリスクは事前に説明しなければ,社長に怒られますよ。

③ 文書提出命令(民訴法219~)
訴訟になり労働者が文書提出命令申立を行い,タイムカードの提出を求めることができます。
その前に,裁判所は会社側にタイムカードを証拠として任意に提出するように再三求めてきます。これに従わない場合は,文書提出命令が出されます。
会社がこれにも従わないとどうなるか?
・ まず,労働者の言い分通りに労働時間が認定されてしまいます。労働者はタイムカードがなくとも,記憶などにもとづいて推定した労働時間を主張・立証してきますが,これが認められてしまうのです(民訴法224条1項)
・ また,20万円以下の科料の制裁を受けることもあります。
ですので,会社としては結局は出さざるを得なくなります。

和解の金額

そして,会社がタイムカードを提出を拒み,訴訟が長引けば長引くほど,労働者が感情的になり,最終的な和解金が高額になる傾向があります。つまり,感情的になり,値引きしてくれなくなるのです。
これに対し,訴訟前に,さっさとタイムカードを出して,ざくっと値引いた金額を提案すると,意外とと受け入れられたりします。
また,タイムカードの提出を拒んで訴訟に発展した場合,裁判対応の為にかかる人事部,経営者,従業員の人的負担はもちろん,弁護士費用の負担も馬鹿になりません。
そうだとすると,訴訟前に,さっさとある程度の金額を払ってしまった方が,会社にとってコストの点でよいことが多いのです
 
もちろん,会社側にて有効な反論がある場合は徹底的に行うべきです。ただし,それとタイムカードなどと開示するか否かは別次元の問題と考えた方がよいでしょう。

なお,東京地裁労働部の裁判官も同様の意見を述べていました。

元東京地裁36部 藤井聖悟 裁判官
使用者は、労働者が主張立証責任を負っているからといって、非協力を決め込む訳にはいかず、労働者の労働時間を適正に把握する義務を負っていることを踏まえて、労働者からの証拠の事前開示の申出に対して、誠実に対処する必要があるように思います。こうした事前申入れの拒否は、問題の先送りに過ぎませんし、多寡はともかく、支払うべき残業代がある場合には、将来的に、遅延損害金や付加金の負担や労働者側の譲歩を引き出しにくくなるなどのリスクが発生することとなりますので、自分の首を絞めることにもなりかねません。ですから、労使とも、訴訟前の段階でこうした相談があった場合には、証拠の事前開示を求めた上で、未払残業代の有無及び額についで、踏み込んで検討し、任意の残業代支払の可否及び条件等について事前交渉を行うことを励行していただきたいと思います(割増賃金請求訴訟の知識と実務 (弁護士研修集中講座)P186)。


~おわり~

弁護士の吉村です。

若干涼しくなってきましたが,皆様はいかがお過ごしでしょうか?

さて,個人の自由が無秩序に叫ばれる昨今ですが,会社で仕事する際は,企業の秩序を遵守してもらわなければなりません。組織の中で働く以上,一定の秩序が存在し,労働者がそれに従わなければならないことは,そもそも労働契約の内容になっているのです。その契約に基づいて,使用者が秩序を作ったり,守らせたり,秩序を破った労働者に制裁を与えることができます。

ただ, 秩序を守らせることができるといっても,経営者は労働者を一般的に支配できる訳ではありません。あくまでも企業体・組織体として合理的な範囲内でのみ秩序を守らせることができるのです。

この点を勘違いされると,不当な懲戒処分,パワハラ,セクハラ等につながるんです・・・

今回の原稿では, 「
従来認めていた会社備品の私的利用等を禁止し、違反者を処分することは可能か」というテーマについて解説しました。

具体的には,
①会社の貸与PCで,勝手に音楽を聴いたり動画を再生したりすることを禁じられるか?

②会社の電源で携帯等の充電をすることを禁じられるか?

③私物の持ち込みを禁じ,所持品検査が出来るか?

について検討しております。

どれもありがちな出来事ですね。さて,どうなのでしょうか?

この点について,(財)労務行政研究所発行の人事労務の専門情報誌「労政時報」 第3828号(12.8.2)【相談室Q&A】に,寄稿しました。

実務対応を含め具体的にわかりやすく説明しておりますので,是非ご高覧ください。

なお,私は,サラリーマン時代,筋トレにこっていた時期があり,プロテインのデカイ缶を事務デスク内に持ち込んで,休みに牛乳に溶かして飲んでいましたが,上司は「マズそ~なもの飲むなよ・・・」と言うだけで,特に咎められませんでした・・・。

 2012年09月08日18時42分15秒


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弁護士の吉村です。

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